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殿堂入り:交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 オペラ バロック SALE!! レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY:Symphony No.5 in e minor Op.64
コンスタンティン・イワーノフ(指揮)
Konstantin Ivanov



掲載しているCDジャケットとそのCD番号は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。


チャイコフスキー:交響曲第5番

コンスタンティン・イワーノフ(指)
ソビエト国立交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Treasures
TRT-003(1CDR)
録音:1956年(モノラル) ※TELEFUNKEN LT-6624からの復刻
演奏時間: 第1楽章 14:41 / 第2楽章 12:17 / 第3楽章 5:59 / 第4楽章 12:11
カップリング/チャイコフスキー:フランチェスカ・ダ・リミニ
ローカル色に安住せず、入念にニュアンスを注入したイワーノフの真価!”
※既にVISTA VERA盤のレヴューを掲載済みですが、Treasures盤を聴いて印象が一変しましたので、再レヴュー致します。
この「チャイ5」は、自信満々で豪快なイワーノフのイメージとは、ちょっと様相が異なります。まず特徴的なのが、まるでドイツ系の指揮者のように構成を見据えた正攻法であること。その上で、第1楽章序奏に象徴されるように、行き場のない孤独感を表出し、ダイナミズム放射を抑え、「内向的なチャイコフスキー」に比重をおいたアプローチを行っているのです。極端なコントラストも持ち込まず、ド迫力で圧倒する瞬間も少ないですが、ただ渋いだけの演奏だと思ったら大間違い!第1楽章だけでも、イワーノフが慣習的なロシアン・スタイルから一旦離れて、スコアを丁寧に読み込んでいることが窺えます。第2主題の直前(4:31〜)では、管楽器を抑えて弦の響きをキリッと立たせたり、第2主題冒頭のスフォルツァンドは、これほど求心力を持った例は稀。副次主題が現れる直前(5:44〜)の木管の音型は、わずかにディミニュエンドして弦との橋渡しが実に流麗。大詰め495小節から一瞬ピアニッシモにしてからのクレッシェンドする見事さ等々、パワーで押し切ることを第一に考えていては成し得ない技ばかりでう、全てに細やかな共感が息づいています。そのよう繊細な配慮を持ちながらも、音楽自体は十分に大きく輝かしく聳えているところが、また魅力です。第2楽章のホルン・ソロも、屈指の名演奏で、まさに風格美で魅了。
これは、ロシア的な臭みが苦手という方にも、その臭みこそ命と信じる方にも、両方に訴え掛ける力を持つ名演奏と言えましょう。オケがもしもバイエルン放送響あたりだったら、更に普遍的な価値を誇る存在になったことでしょう。【湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 仄暗いクラリネットが絶妙に融合。テンポは、やや遅め。
ツボ2 主部のテンポもテンポはやや遅めで、先へ進むのを拒むかのよう。クラリネットとファゴットのリズムもエッジを立てずにまろやか
ツボ3 強弱の振幅を抑えて、内省的ななニュアンスを丁寧に表出。
ツボ4 メゾ・フォルテでわずかにアクセントを施し、アーティキュレーションを明確化。
ツボ5 スフォルツァンドを完全実施!しかも、サッと聴き手を別世界に誘う求心力を孕む。
ツボ6 テンポは落とさず、切迫感を炙り出す。
ツボ7 線は克明だが、決して無機的ではなく、潤いに満ちている。
ツボ8 感情を露骨に投影せず、イワーノフが決して表現主義に陥らない洗練さも携えた指揮者だということを窺わせる瞬間。
ツボ9 イン・テンポのまま進行。16分音符は不明瞭。495小節からのクレッシェンドを意味深く実行した例は極めて希少!
第2楽章のツボ
ツボ10 弦全体のバランスが非常に良く、土臭さと洗練がミックスしたようなニュアンスが印象的。ホルンは、ヴィブラートたっぷりで、よく通る音量だが、品位と風格を兼ね備え、音楽的情報量の多さに唖然!ロシア音楽を聞く醍醐味も満喫。
ツボ11 一切“溜め”を入れず、一気に雪崩れ込む。
ツボ12 クラリネットは、イン・テンポで軽く流しているようでいて、粘着力のあるフレージングが雰囲気満点。
ツボ13 「ツボ7」同様、手ごたえのある見事な響き。
ツボ14 ティンパニの強打に頼らず、全体が一丸となった見事なヴォルテージの高揚!
ツボ15 繕った繊細さではなく、自然なデリカシーに溢れるフレージングが好印象。
第3楽章のツボ
ツボ16 イン・テンポ。
ツボ17 愉しい音の饗宴ではなく、やや粘着質のフレージングが余情を醸し出す。
ツボ18 見事な連携を見せる。この後の弦をディミニュエンドするが、わざとらしさ皆無。
第4楽章のツボ
ツボ19 威厳を誇示せず、威圧せず、自然な風格美。
ツボ20 ホルンは、完全に裏方だが、全体の響きの厚みを背後から支える役割を確実に担う。
ツボ21 ティンパニは、冒頭にアクセントを置きい、後はほぼスコアどおり。テンポもごく標準的。
ツボ22 完全無視。
ツボ23 これはパーフェクトと言いたい!決して威嚇ではなく、明確な主張を携えた強靭な張り出し!
ツボ24 主部冒頭よりわずかに速いテンポ。
ツボ25 鈍い打ち込み。
ツボ26 そのままイン・テンポ。
ツボ27 トランペットは、さすがの輝きぶり!
ツボ28 ほぼ楽譜の音価どおおり。
ツボ29 勇壮な行進だが、他をねじ伏せるような威厳とは異なり、晴れやかな音楽。
ツボ30 弦は475小節ではレガートで奏し、477小節は音を切る。490小節以降は、完全にトランペット協奏曲!多少弦の音量を落としているっせいもあって、その輝きと巧さたるや鳥肌もの!
ツボ31 スコア通り。
ツボ32 トランペットとの響きの均衡がとれた、清々しい咆哮。
ツボ33 見得を切る素振りも見せないイン・テンポ。


以下は、VISTA VERA盤を聴いてのレヴューです。
コンスタンチン・イワーノフ(指)ソヴィエト国立交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
VISTA VERA
VVCD-00157

録音:1956年(モノラル)
演奏時間: 第1楽章 14:46 / 第2楽章 12:16 / 第3楽章 5:57 / 第4楽章 12:04
カップリング/序曲「1812年」(改竄版)(1960年ステレオ・ライヴ)
“馬力はあるけど迫力がいまひとつ…。イワーノフの真意はどこに?”
イワーノフで単独でCDが発売されるのは非常に珍しく、この「チャイ5」もまさかCD化されるとは思いませんでした。「野人」と称されることの多いイワーノフの芸風がこれによってされに明らかになりました。
まず第1楽章。冒頭のクラリネットが妙にクローズアップされているのは録音のせいだと思いますが、どう聴いても繊細さとは程遠く、かといってシルヴェストリのような奇抜さもなし。終楽章にいたるまで、「ダイナミックな活力にあふれた演奏」と言うこともできますが、第1楽章展開部あたりから、その馬力に根源的なスケール感がだんだん露呈してしまいます。つまり、頑張ってはいるけれど音楽自体が小さいのです。第2楽章では有名なホルン・ソロ意向で古きロシアの伝統湛えた骨太な音色に見せられ、32小節のチェロのフレーズの濃密さは、体全体で感じきった熱いフレージングには涙を禁じえません。ただ、このフレーズがヴァイオリン群に移行するとなぜか音が痩せるのが残念。第3楽章は、羽のような軽やかなど全く念頭に置かない重厚さ。冒頭から低弦のピチカートがズンズンとリズムを突き上げ、それが味と言えば味ですがやはり滑稽。終楽章では猛進すると思いきや、意外とまじめな進行で、冒険はなし。そもそも、テンポを細かく操作したり、フレージングを自在に伸縮させたりといった技はほとんど見せず(と言うか苦手と思わせる箇所が多々あり)、決して手抜きの演奏ではなくオケ自体も魅力に溢れているのに、生き生きとしたものが伝わってこないのです。
カップリングの「1812年」は改案版であることち、初出と思われるライヴ音源を採用している点が注目点ですが、ライヴ録音にも関わらず、どこか精彩を欠き、後年のスタジオ録音のとてつもない魅力には到底及びません。
第1楽章のツボ
ツボ1 冒頭のクラリネットは、かなりクローズアップして録られており、強弱の陰影にやや乏しい。それを支える弦は無骨に張り出す。
ツボ2 主部冒頭の弦の刻みの響きがなぜか痩せているが、録音の不安定さに起因するものと思われる。ゆっくりと粘着質に進行
ツボ3 粘りぎみのフレージングが曲想にマッチ。
ツボ4 緩やかに下降しながら減衰するのではなく、メゾフォルテで軽くアクセントが付く。
ツボ5 決然とインテンポで突入。スフォルツァンドはかなり鋭角的。その後は情感たっぷり。
ツボ6 情感は込め抜いているが、やや呼吸が浅い気がする。
ツボ7 ものすごい強靭さ。質感、量感、ともに見事!
ツボ8 緻密さはないが、心からの慈しみを素直にフレージングに込めているところが好印象。
ツボ9 インテンポのまま突入。16分音符の立ち上がりはほとんど聞こえない。495小節からさらに音量を落とし、次第にクレッシェンドするきめの細かい配慮はやや意外。
第2楽章のツボ
ツボ10 最初の低弦は弱音を意識せずに野太く唸り、泥臭い。ホルンはまさにロシア色満点!大柄で脂肪分たっぷりの響きが腹に響き、並外れた肺活量を窺わせる。これに絡むクラリネット、オーボエも同様で、ホルンと互角に響くとは驚愕!
ツボ11 なんと冒頭のフォルティシシモを上り詰める前に素通りするような味気なさ。
ツボ12 何も余韻を感じないままクラリネットが吹き始めてしまう。このクラリネットもファゴットも無表情。
ツボ13 「ツボ7」同様、手ごたえのある見事な響き。
ツボ14 ここはなぜか律儀な楷書風。それなりに音量は上げているが、音楽自体の高揚に繋がって行かないのがもどかしい。
ツボ15 当時のソビエト国立響のクオリティの高さを如実に示した箇所。この弦のテクスチュアの統一ぶり、凝縮した響きは現代的な洗練とはほど遠いものながら心に響く。
第3楽章のツボ
ツボ16 そのままインテンポ。
ツボ17 重戦車を無理やり小刻みに操作したような印象。メルヘンも香りも皆無で、それを当然のように弾いているのでちょっと笑える。
ツボ18 見事な連携。この後の弦をディミニュエンドするとは珍しい。
第4楽章のツボ
ツボ19 ゆったりとしたテンポで荘厳な雰囲気。
ツボ20 ホルンかかなり張り出して無骨さに拍車をかけている。管楽器同士のハーモニーのバランスも良好。
ツボ21 ティンパニは冒頭で一撃。その後はほぼ一定音量。テンポはごく標準的で意外と真面目な表現。弦の弓圧に全てを委ねたような感じ。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 猛獣のような唸り!モノラルで響きは混濁するものの、それでもこの食って掛かるような表情はリアルに伝わってくる。
ツボ24 ややテンポを上げる。
ツボ25 ほとんど聞こえない。
ツボ26 そのままインテンポで、結果的に主部冒頭テンポよりも速くなっている。
ツボ27 まっとうなテンポ。特に切迫感が増すといった雰囲気でもない。
ツボ28 ほぼ楽譜の音価どおり。
ツボ29 冒頭の管のユニゾンから量感たっぷり。そこへ素晴らしいい放射力を誇る弦が飛び込む。
ツボ30 弦は音を切る箇所とつなげる箇所が混在。トランペットはいかにもバリバリロシア風ヴィブラートで朗々とレガート。
ツボ31 スコアどおりのようだが、501〜502小節の間は休ませ、その後少しずつ浮上する手法。
ツボ32 ものすごい風格!
ツボ33 テンポをいじることなく、最後までインテンポ。

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