|
アルヴィド・ヤンソンス(指) |
レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 |
第2楽章ホルン・ソロ: ヴィタリー・ブヤノフスキー |
|
ICA CLASSICS
ICAC-5177(2CD)
|
録音:1971年9月17日 ロイヤル・フェスティヴァル・ホール 【ステレオ・ライヴ】 |
|
演奏時間: |
第1楽章 |
14:32 |
/ |
第2楽章 |
12:38 |
/ |
第3楽章 |
5:36 |
/ |
第4楽章 |
11:18 |
|
カップリング/チャイコフスキー:『眠れる森の美女』〜序章: リラの精/ パ・ダクション:
ローズ・アダージョ/パノラマ: アンダンティーノ/ワルツ、フランチェスカ・ダ・リミニ
Op. 32、プロコフィエフ:古典交響曲 |
“終楽章の史上屈指の迫力でロイヤル・アルバート・ホールが熱狂!” |
前年の日本でのライブ録音(Altus)も本場物の強みを臆することなく押し出した快演でしたが、この初出の英国ライヴもそれと甲乙つけがたい熱演。強弱操作などの解釈がムラヴィンスキーと同じなので、同じスコアを使用していると思われますが、出てくる音楽のテイストはムラヴィンスキーの亜流などではないヤンソンス独自の瑞々しさが光り、この作品を知り尽くしたオケも、会場の雰囲気とも相俟って伸び伸びと演奏に興じているように感じられます。ただ、期待が大きすぎたせいか、第3楽章までは強烈なインパクトを残すことが殆どなく、堅実な演奏に終始…とも言えますが第1楽章再現部でティンパニが叩き忘れていたり、金管が変に楽天的な音色を発したりという現象を考えると、旅の疲れが残っていたのでしょうか?あるいは、やや録音が不鮮明なことに起因しているのかもしれません。
終楽章に達してようやく音楽の焦点がピタッと合致し、泣く子も黙るダイナミズムが爆発!金管の咆哮、ティンパニの容赦ない乱舞は、どんな批判も跳ね飛ばす確信的な大放射!当時のソ連のオケの専売特許たる超高速の爆裂ぶりはAltus盤を凌ぐほどで、この楽章だけは文句なしの大名演。この求心力の高さを第1楽章から発揮してくれていたら世紀の名演になっていたことは間違いないだけに、他の楽章の弱さ(と言っても凡庸な演奏の何倍も聴き応えあり)が残念でなりません。ただ、第1楽章の第2主題が独特の可憐なニュアンスを湛えていることや、カップリングの他の曲が全てが鉄壁の名演である事実は特筆すべきことです。【2024年7月・湧々堂】 |
|
第1楽章のツボ |
ツボ1 |
ごく標準的なテンポで、凝った味付けも施さず淡々と進行。クラリネットの音色はかなり骨太。 |
ツボ2 |
テンポは標準的。クラリネットとファゴットが恐るべき均衡を保っているが、ニュアンスは淡白。 |
ツボ3 |
スコアどおり。 |
ツボ4 |
スコアどおり。 |
ツボ5 |
最初にクレッシェンドとデクレッシェンドを施さず、119小節から微妙な強弱変化を与えることで可憐な表情を作り上げている。 |
ツボ6 |
フォルティッシモは強調せず、テンポの変動も抑制気味。 |
ツボ7 |
少しテンポを上げるが、音量は控えめにして、151小節までの雰囲気の余韻を引き継ぐ。 |
ツボ8 |
スコアどおりなのは良いとしても、レニングラード・フィルならではの求心力の高さが感じられないのが不思議。 |
ツボ9 |
イン・テンポで進行。荘重な拍節感が心に迫る。 |
第2楽章のツボ |
ツボ10 |
冒頭の低弦は過度な思い入れを排してサラリと進行。ホルン・ソロの技術はもちろん完璧だが、巨大なホールを意識してか豊かに響きすぎる。 |
ツボ11 |
やや不発。感情の頂点と音量の頂点が微妙にずれている。 |
ツボ12 |
テンポは不変。クラリネットの技術は完璧だが、やや技巧が鼻につく。 |
ツボ13 |
繊細に一音一音を吟味し、余韻を感じながら進行。 |
ツボ14 |
作品への共感力のバロメーターであるこの箇所は流石に見事!一部の隙もなく最高潮点まで大きな呼吸を維持。 |
ツボ15 |
見事としか言いようがない美しいアンサンブルだが、今ひとつ胸に迫るものが弱いのは録音のせいか? |
第3楽章のツボ |
ツボ16 |
完全にイン・テンポのまましなやかに滑り込む。冒頭でテンポを落とす必要性を全く感じさせない自然なフレージング!ファゴットは超完璧! |
ツボ17 |
細かい音型に少しでももたつきがあると音楽が途端に淀んでしまう箇所だが、その心配は皆無。 |
ツボ18 |
ニュアンスが聞き取れない。録音のヒスノイズと会場の大きさのため。 |
第4楽章のツボ |
ツボ19 |
テンポ自体は中庸だが音に芯が宿り、強烈な弓圧を用いなくても独特の威厳を引き出している。 |
ツボ20 |
ホルンは裏方に徹しているわけではないが、Altus盤と比べて抑制気味に聞こえる。 |
ツボ21 |
ティンパニはトレモロの途中から弱音で弦の刻みが快速で開始するムラヴィンスキー方式。 |
ツボ22 |
アクセントなし。 |
ツボ23 |
殊更に強調はしないが、力感は十分。 |
ツボ24 |
わずかにリテヌートした後にすぐに主部冒頭のテンポへ切り替える。 |
ツボ25 |
強打ではないが克明な一撃。 |
ツボ26 |
そのままイン・テンポ。 |
ツボ27 |
主部冒頭のほぼ同じテンポ。トランペットの響きは明るめ。技術は完璧。 |
ツボ28 |
8分音符の音価は、やや長め。最後に一撃は置かない。 |
ツボ29 |
447-448小節の弦のエッジがからり鋭く激しい。微温的に進行しがちな中でこの決然とした響きは曲想にマッチしており、一つの基準となるスタイだと思う。 |
ツボ30 |
弦もトランペットも、ロシア風のレガートに徹している。 |
ツボ31 |
改変なし。499小節で音量を落とすが、ムラヴィンスキー程のコントラストは与えずにほんの一瞬だけ。 |
ツボ32 |
腹の底からの咆哮! |
ツボ33 |
インテンポが基調。最後の4つの和音の打ち込みでわずかにテンポを落とす程度。ティンパニの効力絶大! |