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ショパン/CHOPIN |
Alba
ABCD-247 |
ショパン:ピアノ協奏曲第2番、ピアノ協奏曲第1番 |
ヤンネ・メルタネン(P)、ハンヌ・コイヴラ(指)ヨエンスー市O | |
録音:2007年 | |
“直截さと繊細さを兼ね備えた奇跡的なピアニズム!” | |
ヤンネ・メルタネンはフィンランド出身。ブルーノ・リグット、バシキーロフ、ラザール・ベルマンに師事し、1992年にはダルムシュタットで開催されたショパンコンクールで優勝したピアニストですが、彼の力量の凄さは生半可なものではありません!ウェットな感傷を一度さっぱりと洗い流したうえで、自身の感性を信じて思いのたけを正直に綴るピアニズムが実に魅力的。女々しさを感じさせないところはベレゾフスキーの演奏に近いかもしれません。テンポの緩急と強弱の個性的な対比を盛り込みながらも、独善的な印象を与えず、美しく硬質に輝くタッチも心を捉えます。「第2番」第1楽章は男性的な直截なダイナミズムに溢れ、続く第2楽章もポーカーフェイスで進行すると思いきや、一変して纏綿たるレガートで高潔な雰囲気を徹底的に醸し出し、全ての音の粒はときめきに彩られてます。特に、苦悩を深く抉るような中間部のアプローチは聴きもの。終楽章は、主題のマズルカのようなリズムとアクセントの揺らぎがこれまた個性的ですが、これはツボにハマる人も多いことでしょう。終楽章のホルン・ソロ以降の畳み掛けはメルタネンのパッションが最高潮に。全体的にかなり細部にわたって緻密にダイナミズムへの配慮を巡らせているにもかかわらず、ちまちましたところが一切なく、一気に全曲を統合してしまう力量は並大抵のものではなく、地元フィインランドで人気が高いのも大いに頷けます。そして更に感動的なのが「第1番」!第1楽章の主題はまさに男の哀愁!第2主題に移る直前の間合いに込められた余韻の美しさにハッとさせられ、その第2主題は愛の結晶と言うしかない、育み尽くしたタッチの魅力にイチコロ!旋律の美しささえ忘れるほど、そこに流れる音楽の波動そのものが奇跡的な訴求力を生んでいるのです!第2楽章は伸縮自在なアゴーギクがまたしても心の深部に触れます。もちろん表面的には似た演奏はいくらでもありますが、このコンマ何ミリでも違ったら全く別物になってしまうような、スコアが放つ波長と完全に調和したフレーングは一体どうしたら生まれるのでしょうか?終楽章は例によって個性的なリズム感が耳を捉えますが、独善的な嫌味などもちろん皆無。2:04からの突進力はショパンの常識的な演奏から大きくはみ出していますが、そのあまりの確信の強さに誰が異論を挟めましょう。しかもその雪崩を打ったような進行の後に訪れる第2主題がなんと美しく引き立っていることか!なにからなにまで信じられません!起伏に富んだコイヴラの指揮とのコンビネーションも極めて絶妙! |
OEHMS OC-326B |
ピアノ協奏曲第1番、第2番 |
エヴァ・クピーク(P) スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指)ザールブリュッケンRSO |
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録音:2003年(デジタル) | |
“ポーランド人のプライドを掛けた尋常ならざるショパンへの愛!” | |
まず印象的なのがスクロヴァチェフスキの伴奏。ワイセンベルクとの饗宴、N響&ダビドヴィチとの共演などでも明らかなように、ここでも作曲家の視点で、声部バランス、テンポ、アクセントを再構築した独自の響きが魅力ですが、凄いのはそのオケの響きが一人歩きするのではなく常にピアノ・ソロと完全に協調して、ポーランド人としての民族的な息吹を徹底して注入し、ポーランド人としてのショパンの精神世界を具現化しようとする強固な意思を痛切に感じさせる点。ショパンの協奏曲をこいうスタンスで貫いた演奏は他ではなかなか耳にできません。クピークのピアノは派手なヴィルトゥオーゾの誇示には全く無縁で、繊細さの極み!使用ピアノは明記されていませんが、スタインウェイではないと思われ、真綿のように柔らかなタッチがまた魅力的。その繊細さを携えて、むしろピアニストの側からオケの響きに入り込み、共鳴し合って一つの音像を醸しだすという姿勢が最後まで貫かれています。オケとソロ双方が個性をぶつけ合っていたら、このような至福のニュアンスは生まれなかったでしょう。第1番終楽章冒頭の付点リズムはもちろん忠実に再現。「誠実」といえる演奏は多く存在しますが、尋常ならざる本物の愛情と共感の為せる技をとくとご堪能あれ! |
Audiophile APC-101502 |
ピアノ協奏曲第1番、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番 |
ヴィクトリア・ポストニコワ(P)、ロジェストヴェンスキー(指)モスクワRSO | |
録音:1980年代 | |
“バラキレフのド派手オーケストレーション!ロシア色一辺倒の超濃厚ショパン!” | |
ショパンのオーケストレーションの拙さは有名ですが、ショパンの作品をモチーフにしたピアノ小品も遺しているバラキレフがあらん限りの愛情を注ぎ込み、オケパートに加筆改訂を施したのがこのヴァージョンです。金管、木管を重ね、打楽器が随所にアクセントを利かせるこの版を「改竄」と感じるかどうかは聴く人次第。ただ、「これじゃまるでラフマニノフだよ」と言う前に、ポストニコワが持ち前のダイナミズムと濃密なフレージング力を水を得た魚のように伸び伸びと繰り広げ、愛する夫、ロジェストヴェンスキーが強力にサポートすることで生まれる内容量たっぷりの音楽には、笑い事ではない感動が詰まっているのです!プロコフィエフは、打楽器的なピアノの扱いを徹底的に追求した快演。 |
EMI 5566822 |
ピアノ協奏曲第1番、第2番 |
フランソワ・ルネ・デュシャーブル(P)、ミシェル・プラッソン(指)トゥールーズ市SO | |
録音:1997年(デジタル) | |
“曲のイメージを根底から変えた、信じ難い豊穣なニュアンス!!” | |
「第1番」で、第1楽章のピアノが入る箇所から衝撃的!凄い気迫で飛び込んだかと思うと、切ないテーマに移ってからもテンポを落とさずに毅然として構成美を保ち、常識的なアゴーギクを根本から見直して情緒過多に陥るのを徹底的に回避。この2曲からかつて誰も期待しなかった、緊張感に満ちた高密度の流れと推進性を見事に獲得しているのです。持ち前の硬質なタッチは、高潔そのもの。両曲の第2楽章は、伴奏の充実と共に、表面的な美を越えた究極のニュアンスを表出。その伴奏が感動的なこと!ピアノと共にここまで深い呼吸で歌いこんだ演奏は皆無ではないでしょうか。それだけでもこのCDの価値は計り知れません。これは、ショパンの協奏曲を本来の協奏曲のあり方に沿って真剣に鳴らしきった、画期的名演と言わずにはいられません。なお、国内盤発売時、ライナーを書かせて頂きましたが、現在は廃盤。デュシャーブルも突如引退表明してしまいました。 |
PALEXA CD-0509 |
ピアノ協奏曲第1番 +夜想曲第8番、練習曲「黒鍵」、ワルツOp.34-1*、バッハ:ピアノ協奏曲第1番# |
ディヌ・リパッティ(P)、アッカーマン(指)チューリッヒ・トーンハレO、ベイヌム(指)ACO# | |
録音:1950年(モノラル・ライヴ)、1947年(スタジオ録音)* | |
“これが初の完全復刻!リパッティ,死の直前のライヴ!” | |
ショパンの協奏曲は、'81年に発見され大センセーションを巻き起こした神懸り的名演。一聴してまず驚くのが、LP初発売時にはテープの劣化と継ぎはぎの跡がはっきり分かってしまったものが、ここでは入念なマスタリングとピッチ修正も施して蘇っていること!更にLPには収録されなかった夜想曲が日の目を見たのも嬉しい限りです。協奏曲は、第1楽章の第1主題の滑り出しだけでも一度聴いたら忘れられないタッチが美しく、フォームは完璧。死の年の録音とは信じ難いほどの万全の気力で技巧を駆使して、極限曲げ結晶化された音楽が無限に紡ぎ出されるのです。第2主題の移行直前の深々とした低音の轟きなどは、奇跡のほんの一例。アッカーマンの指揮も充溢の極み。夜想曲はホフマン、ヘス等の大家同様に、冒頭で即興的な楽句をぽろぽろと奏でてから曲を始めるというスタイルが粋で、演奏自体もスタジオ盤を遥かに凌ぐ、全世界をふわっと包み込むようなスケール感に涙を禁じえません。バッハは、共感たっぷりに歌いつつも、パルティータの演奏で実証済みのように、様式美を貫いた端正な造形が見事です。 |
Classical Records CR-046 |
ピアノ協奏曲第1番、第2番 |
アンナ・マリコワ(P)、ユリアン・コヴァチェフ(指)トリノPO | |
録音:1990年頃(デジタル) | |
“明快なフレージングの裏に潜む翳りの魅力!” | |
かつてA&Eレーベルからでていたものと同一録音。2曲とも素晴らしい演奏ですが、マリコワの健康的に見えてけ蹴りも潜ませる独特のピアニズムが最大に生きている点で「第2番」が特にオススメ!明確な意思を伴って打ち鳴らされる最初の主題から第2主題までの流れは全く淀みなく、アゴーギクも最小限。何の変哲もないようでいて、早速ほのかな翳りが滲み出ます。再現部12:25からの経過句のタッチの硬軟がしなやかに揺れるタッチの妙はまさに絶品。第2楽章は単に雰囲気に身を任せて美しく弾くだけでなく、優麗な旋律美の中の要所でメリハリを付けているので、感覚的な心地よさ以上のフレーズの息づかいがひしひしと伝わります。終楽章は3拍子の感じ方のセンスに裏打ちされた気品に儚さが入り混じるニュアンスが絶妙!やや遅めのテンポも最高に生きています。軽妙な第2主題もそのニュアンスを踏襲し、安易に弾まず、内面から零れるニュアンスをすくい取るような丁寧な描き上げ。またこの楽章はマリコワの思い入れが特に強いのか、フレーズごとの濃淡もより多彩になっていて、切実な訴え掛けに終止惹きつけられます。オケも伴奏の域を超えて確か説得力で迫ります。 |
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