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第5回

ポーリナ・オセチンスカヤ
(ピアニスト)



プロフィール
オセチンスカヤは1975年生まれ。モスクワ中央音楽院で学んだ後にレニングラード音楽院へ進学。1990年代には、レニングラードでもっとも有望と目されるまでに、その才能は音楽通の間で語り草になりましたが、既に彼女は幼少の頃から天才性を発揮しておりて、9歳の時には、なんとベートーヴェンの「皇帝」とシューマンの協奏曲を一つのプログラムで弾き通すという離れ業をやってのけています。初の大舞台はモスクワ音学院大ホールでのモーツァルトの23番の協奏曲。日本にも来日しており、ショパンの作品などのレコーディングが行なわれたようですが、発売には至っていません。

オセチンスカヤの魅力
湧々堂を立ち上げるきっかけとなったと言っても過言ではない素晴らしい才能をやっとご紹介するに至りました!以下のCDはアメリカ・ローカルSONYから1990年代半ばに発売されたロシアの若手を起用した廉価シリーズの中の一枚ですが、発売当初は試聴機に入れた途端、3日で50枚があっという間に売り切れてしまったのを昨日のことのように思い出します。彼女のCDは、このモーツァルトの1曲と、フンメルとフィールドの協奏曲くらいしか存在しませんが、このモーツアルトだけでもその並外れた才能は明らか。まず、インテンポの中で、ここまで多彩な表情を盛り込むことができる人がどれだけいるでしょうか!音の隅々にまで表現したいイメージを注入しながら、作品とじっくりと対話し続け、古典的な様式を更に気品を持って再構築する能力、作品自体の息づかいと自己の呼吸を一体化させるセンスも尋常ではありません。叩き付けなくてもピンと音が立つのはロシアンピアニズムの特徴と言われますが、彼女のそれは、音量的な意味に止まらず、微妙なタッチの操作によって色彩も無限に変化するのです。その絶妙な味わいを是非ご堪能下さい!

モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番、第19番*
ポーリナ・オセチンスカヤ、セルゲイ・エルヴァイェフ(P)*、
サミュエル・ティトコフ(指)サンクト・ペテルブルク祝祭O、
アレクサンドル・ティトフ(指)サンクトペテルブルク古典音楽スタジオO*
デジタル録音
米SONY
QK-64333
天才と天才が手を携えながら紡ぎだした崇高なニュアンス!!
密度の濃い伴奏に導かれて滑り出すオセチンスカヤのピアノは、全ての音が後ろ髪を惹かれるような哀愁を湛えながら、有機的なインテンポを基調として気品のフォルムを一瞬にして形成。第2主題がまろやかさと硬質のきらめきを同時に兼ね備えながら、翳りを引きずりながら淡々と語る風情も涙を誘い、ソロとして自らを際立たせようとする恣意的なそぶりも微塵も見せないので、聴き手の心にストレートに語りかけてきます。タッチの音量の制御バランスにここまで配慮した演奏も他にはまず見当たりません!オケの一部分のように完全に溶け合う部分と、泉が湧き出るようにフワッと、しかも自己顕示的にならずにピアノの旋律線を克明に描く箇所のタッチ配分の絶妙さは、モーツァルトの音楽を真に理解し、共感し尽くしていなければあり得ない技です。再現部で第2主題をオーボエが引き継ぎ、それに答えるようにピアノがアルペジョ風に駆け上がる箇所(9:44〜)のような些細な走句にも、そのあまりの美しさに衝撃が走ります。第2楽章もインテンポが基調ですが、この曲に限らず、あらゆる曲の音盤の中で、このように音楽的な懐の深さを感じさせるインテンポを繰り広げた例は過去を振り返っても思い当たらず、しかも、極端に音の少ないモーツアルトにおいてそれを魔法のように実現しているのですから、この感動が只事でないことはお察しいただけると思います。更に極美タッチとの合わせ技なのですからに、ただ呆然とするばかりです。終楽章も冒頭からその半音階的進行の音色ニュアンスを投影しきった霊妙なタッチが紡ぎ出され、一つとして惰性で置かれている音がなく、再びオケのみで演奏される箇所までの緊迫の持続力が全体に神々しい光を帯びさせるのです!全楽章を通じて最も強固な打鍵を披露する2:48からは、研ぎ澄まされた美色はそのままに毅然とした意思を漲らせ、音像にブレが一切生じない見事な制御力をいかんなく発揮。クラリネットから始る挿入句以降の長調の箇所の、珠を優しくころがすようなタッチも、その一粒一粒を体内に全て取り込みたくなる衝動を抑えられないほど魅惑的ですが、その後再び翳りを帯びていく4:44からの数秒間は、もう全身硬直!信じ難いレガートのセンスとともに呼吸が沈静に向かい、伏目がちに沈みきってから主題を再現するまでの幻想的なニュアンスは、天才と天才が出会った上に更に奇跡が起きたとしか思えません!止めは最後の短いカデンツァ!第1楽章冒頭と同質の暗い空気に回帰し、幻覚の中に漂うようなニュアンスを凝縮し尽くしたまま幕を閉じるのです。この曲はハ短調という調性からか、ベートーヴェン的な逞しさだけが際立ち、肝心のモーツァルトが後退している演奏も少なくない中、モーツアルト独自の様式美とモーツァルトの涙をしっかりと聴き手に届けることに成功したこの演奏は、真の歴史的名盤と声を大にして訴えさせていただきます!


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