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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
ピエール・モントゥー(指揮)
Pierre Monteux



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー
北ドイツ放送交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Treasures
TRT-024(1CDR)
録音:1963年10月(ステレオ)
演奏時間: 第1楽章 13:23 / 第2楽章 11:40 / 第3楽章 6:05 / 第4楽章 11:55
カップリング/R=コルサコフ:スペイン奇想曲、ムソルグスキー(R=コルサコフ編):はげ山の一夜
“90歳目前の老匠とは思えぬ意欲と色彩の放射!”
★コンサートホールのステレオ録音は雑味が邪魔して、頭の中でバランスを一旦補正しなければならない場合が多いですが、ここに収録した3曲もコンサートホールらしい音ながら、ほとんどそんな余計な作業をせずに純粋にモントゥーの芸術を味わうことができます。それによって実感できるのは、モントゥーの音楽には「老境」という概念が存在しないこと。思えば、今世紀に亡くなったプレートルに至るまでの殆どのフランス系の指揮者が同傾向にあるのは不思議といえば不思議です。
 ここに聴くモントゥーの十八番の「チャイ5」も、なんという瑞々しさ!この復刻盤で聴くと、作品への本気の愛をを示すかのようなエモーショナルな表現はモントゥーの同曲異演盤と遜色ないばかりか、多くの人が聴き映えのしない録音のせいで気付けなかったモントゥーの作品のディティールに対する信念まで伝わってきます。 第1楽章の第2主題に差し掛かるまでの突進ぶりは、まるで恋に溺れて一途に燃える青年のよう。スコアに書かれた強弱の指示に対しては拘泥しすぎないのも特徴的で、それが音楽に伸びやかさと明るさを与えています。これもかつての埃っぽい音質で聞くと、それが単に大雑把な演奏に聞こえてしまって、真剣に聴く気持ちが萎えてしまった方が多いのではないでしょうか。5:20からの副次主題の歌わせ方は、ルバートを極力避け、全く媚びず、これみよがしにすすり泣きしないモントゥーの健康的な音作りが色濃く象徴されているシーンです。コーダの自然な突進ぶりも必聴。
 特筆すべきは3楽章の素晴らしさ!開始まもなくエレガンスな空気が広がり、芳醇なロマンに惹きつけられます。しかも1:18からのフォゴット・ソロはの甘美な味わいは空前絶後。そこから中間部に入るまでの楽想の感じ方、香りの高さは比類なし。そこにドイツ的な暗さなど微塵もありません。また、中間部はアンサンブルに破綻が一切ないのにメカニックな印象を与えないのが実に不思議。これほど音の粒立ちの妙味を感じさせる演奏も珍しいでしょう。
 終楽章は、モントゥーの健康的なアプローチが全開。序奏部の途中20小節(0:57〜)でテンポを落とすのは1958年盤から一貫したアプローチ。提示部の声部間の融合ぶりが音楽的なニュアンスとして結実しているのは見事と言うしかなく、これはコンサートホールのステレオ録音としても奇跡的と言えます。172小節の運命動機の斉奏で少しテンポを落とし、188小節から更にテンポを落とすのもかつての録音と同じですが、最もニュアンスが音楽的にビシッと決まっているのがこの録音!372小節のトロンボーンの4分休符(7:38)は、バーンスタイン盤と同じく2分休符に変更。なお、コーダ11:38でトランペットが派手に音を外しているのに録り直しをしていないということは、これが一発録りだったということが想像されます。
モントゥーの「チャイ5」はRCA盤だけで十分などと言わず、先入観なしでこの復刻盤をお聴きいただければ、上記以外にも気付かされることがきっとあると思いますので、ぜひご体感ください。
 カップリング曲では、「スペイン奇想曲」が必聴。大名演です!各シーンの的確な性格付けと関連付け、無理のないテンポ設定の妙、スペイン的な妖しい空気の醸し出し、養分をたっぷり湛えた音の弾け方など、どれをとっても魅力的。これも、オン・マイク気味の録音がプラスに作用ていることは間違いないでしょう。 【2025年7月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸テンポ。2本のクラリネットがユニゾンが微妙な色彩の揺れを表出。全体の表情はむしろ淡白でカラッとした感覚で一貫。
ツボ2 低速だが、符点リズムが崩れるほどの低速ではない。クラリネットとファゴットのユニゾンから発する音は確実に色彩を帯びている。
ツボ3 細部にこだわらずにおおらかな印象。
ツボ4 スラーの8分音符は、確実にテンポを落とす旧スタイル。その落とし方が、フレージングを停滞させるほどかなり露骨。まるで、突然現れた幻想に心を奪われているかのよう。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンドは無視。ここでも強弱の変化を杓子定規に捉えずおおらかさが優先。それでも、決して呼吸は決して浅くならない巨匠芸。
ツボ6 強弱の変化よりも、音符に込める愛の熱さ一本で通すイメージ。
ツボ7 縦の線が揃っているとは言い難いが、オケの潜在的な純朴サウンドと共にヒューマンさが滲む。
ツボ8 ルバートを極力避けてサラッと進行するのは、昨今の多くの演奏よりも洗練度は上。
ツボ9 16分音符は聞き取れない。ここからテンポアップインテンポのまま。そのエネルギーを最後の最後まで維持。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の繊細さよりもおおらかさで包み込む。ホルンは危なげはないが、色香を欠きあまりにもぶっきらぼう。純ドイツのオケを象徴する音色。
ツボ11 テンポを溜め込まずに一気に走る。
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットは冒頭のホルン・ソロ同様に色香ゼロ。
ツボ13 弱音寄りで、続く主題へ優しく橋渡しをするかのよう。
ツボ14 凄い突進力だが破壊性はなく、ここでも一途さ、熱さが際立つ。
ツボ15 感覚的には淡白。締めくくりだけテンポを落とすのが粋。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 機能的な機敏さではなく、音の粒立ちの妙味を感じさせる演奏。
ツボ18 見事に一本のラインを形成している!
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。弦の上手さと味わい深さが印象的。
ツボ20 かつての録音ではホルンを徹底的に突出させていたが、ここでは完全に脇役に徹している。
ツボ21 テンポは標準的。ティンパニは、58に少しアクセントを置いてから一定の弱音を持続するのみ。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスで、殊更には強調はしない。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 抑制の効いたアクセント。
ツボ26 そのままイン・テンポ。
ツボ27 ほとんどインテンポのまま進行。
ツボ28 本来の音価よりも長め。ティンパニは最後に軽くアクセント。
ツボ29 オンマイクの弦の存在感により、輝かしい勝利を演出。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。
ツボ32 いかにも渋いドイツサウンド。音を外し気味だが強靭さは伝わる。
ツボ33 完全なインテンポ進行が清々しい。


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