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殿堂入り: 交響曲  管弦楽  協奏曲  器楽曲  室内楽  声楽曲  オペラ  バロック レーベル・カタログ チャイ5



チャイコフスキー:交響曲第5番〜全レビュー
TCHAIKOVSKY : :Symphony No.5 in e minor Op.64
ピエール・モントゥー(指揮)
Pierre Monteux



掲載しているジャケット写真と品番は、現行流通盤と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。



チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー
ボストン交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
WEST HILL RADIO ARCHIVES
WHRA-6034(11CD)
廃盤
録音:1959年7月19日 タングルウッド(ステレオ・ライヴ)
演奏時間: 第1楽章 13:12 / 第2楽章 11:48 / 第3楽章 5:35 / 第4楽章 11:14
“ライヴならではのノリの良さとラテン的な開放感で心揺さぶる超快演!”
★1959年の録音で、ややドライながらかなり良好なステレオ録音であることが嬉しい限り。モントゥーお得意の曲だけに基本コンセプトは完全に出来上がっていいますが、オケの自発性が全開で、予定調和ではない即興的なニュアンスで訴えかける魅力に事欠きません。
 第1楽章、展開部直前の容赦ない加速はセッションにはない魅力。その熱いモードのままかなり感情むき出しになる箇所があるのが印象的。終結部487小節以降の凄まじい熱量にも驚かされます。
 第2楽章のホルンのソロの後、主題を弦が歌う箇所の気品あるフレージングが心を捉え、クラリネット・ソロ開始前の60小節のクレッシェンドがこれほど意味深く迫る録音は他に思い当たりません。この世代の指揮者で、スコアを大掴みではなく細部の意味を自然に再現する指揮者は稀有でしょう。とにかく緩急の入れ替えや、呼吸、緊張の持久力、全てが名人芸!特に142小節以降の決死の駆け上がりは、近年のどの指揮者に期待できましょうか!
 終楽章主部の快速ぶりもライヴならでは。トランペットなどはホールの響きを意識してかかなりダイレクトな強音を発しますが、決して煩くなく、一定の品位を保つモントゥー特有の空気感がビシッと張り巡らされているのを感じずにはいられません。最後の拍手を除いて実測で11秒弱という猛烈なスピード感ですが、粗野な走行性ではなく人間味と爽快感を感じさせるのも、モントゥーの芸を堪能する醍醐味と言えましょう。
 なお、この録音は「US&G "UNVERGESSLICH SPIELS" GmbH」という名の非正規盤も存在し、テープ・ヒスが気になるものの、生々しい迫力、特に弦の生き生きとしたニュアンスは、丁寧にマスタリングが施されているこのWHRA盤を凌ぐように思います。【2025年8月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸のインテンポ進行するも。弦もクラリネットもかなり濃密に悲哀を湛えている。
ツボ2 その悲哀を引き売りながら、やや大遅めのテンポでおもむろに開始。、
ツボ3 インテンポながら悲哀はそのまま。
ツボ4 スラーの8分音符でテンポを落とす旧スタイルだが、繰り返すたびインテンポへと移行する。
ツボ5 直前までアッチェレランドで煽り、ここからテンポを一弾落として濃厚に歌い上げる、冒頭のスフォルツァンドは無視。
ツボ6 これは理想形の一つ!スフォルツァンドの意味合いと、アニマートからの発作的な明るい色彩の表出に成功している。
ツボ7 鮮やかな駆け上がり。
ツボ8 「語るフレージング」の妙!1小節ごとに丁寧に進行しつつ、176小節から一息で呼吸するその自然さは名人芸!
ツボ9 16分音符は聞き取れない。ここからテンポアップして一気呵成に突進。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の弦は、息の長いフレージングと言うより、一音ごとに丁寧に思いを込めるスタイル。ホルンは、野外会場のせいか、ホールと美しく溶け合うトーンは望めないが、しっかりと音楽を感じたフレージングを実現している。弦に主役を移してからの美しさは格別
ツボ11 呼吸を溜めに溜めた後の気高い高揚!
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットもファゴットも素朴kな響きながら悲哀は十分。
ツボ13 ボストン響の目の詰んだ弦のアンサンブルの魅力を存分に堪能!
ツボ14 凄い粉砕力だが気品は失わず、呼吸も停滞せず、緊張感を増幅させる名人芸!
ツボ15 最後の一音に向けて少しずつテンポを落とす手法が得も言われぬ余韻を与えている。終了後に拍手が湧くのが野外ならでは。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。少しリズムの崩れあり。
ツボ17 弦の機敏な動きが、機械的にならずに愉悦感を放射。
ツボ18 やや遠いが、美しく見事に一本のラインを形成。
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。上質の弦の響きが印象的。20小節からテンポを落とす
ツボ20 ホルンは裏方に徹している。
ツボ21 テンポはムラヴィンスキーに近い快速ティンパニは、58小節に少しアクセントを置いてから一定の弱音を持続。66小節で一打。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスで、意図的な突出はない。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 強い意志を込めた一撃。
ツボ26 そのままイン・テンポ。
ツボ27 ごくわずかにテンポを落とす。更に452小節でガクンとテンポを落としてトランペットのフレーズを強調
ツボ28 本来の音価よりも長め。ティンパニは最後にアクセントを置かずにそっと引き下がる感じ。会場の拍手を避けるための処置かも知れないが、拍手は沸き起こる。
ツボ29 弦もトランペットも開放感全開!
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。ティンパニの打ち込みも入魂!
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。
ツボ32 トランペットもホルンも明朗そのもの。ラテン的な痛快さを感じさせる!
ツボ33 最後の4小節のみテンポを落とし、決然と終わる。

チャイコフスキー:交響曲第5番

ピエール・モントゥー
北ドイツ放送交響楽団
第2楽章ホルン・ソロ:
Treasures
TRT-024(1CDR)
録音:1963年10月(ステレオ)
演奏時間: 第1楽章 13:23 / 第2楽章 11:40 / 第3楽章 6:05 / 第4楽章 11:55
カップリング/R=コルサコフ:スペイン奇想曲、ムソルグスキー(R=コルサコフ編):はげ山の一夜
“90歳目前の老匠とは思えぬ意欲と色彩の大放射!”
★コンサートホールのステレオ録音は雑味が邪魔して、頭の中でバランスを一旦補正しなければならない場合が多いですが、ここに収録した3曲もコンサートホールらしい音ながら、ほとんどそんな余計な作業をせずに純粋にモントゥーの芸術を味わうことができます。それによって実感できるのは、モントゥーの音楽には「老境」という概念が存在しないこと。思えば、今世紀に亡くなったプレートルに至るまでの殆どのフランス系の指揮者が同傾向にあるのは不思議といえば不思議です。
 ここに聴くモントゥーの十八番の「チャイ5」も、なんという瑞々しさ!この復刻盤で聴くと、作品への本気の愛をを示すかのようなエモーショナルな表現はモントゥーの同曲異演盤と遜色ないばかりか、多くの人が聴き映えのしない録音のせいで気付けなかったモントゥーの作品のディティールに対する信念まで伝わってきます。 第1楽章の第2主題に差し掛かるまでの突進ぶりは、まるで恋に溺れて一途に燃える青年のよう。スコアに書かれた強弱の指示に対しては拘泥しすぎないのも特徴的で、それが音楽に伸びやかさと明るさを与えています。これもかつての埃っぽい音質で聞くと、それが単に大雑把な演奏に聞こえてしまって、真剣に聴く気持ちが萎えてしまった方が多いのではないでしょうか。5:20からの副次主題の歌わせ方は、ルバートを極力避け、全く媚びず、これみよがしにすすり泣きしないモントゥーの健康的な音作りが色濃く象徴されているシーンです。コーダの自然な突進ぶりも必聴。
 特筆すべきは3楽章の素晴らしさ!開始まもなくエレガンスな空気が広がり、芳醇なロマンに惹きつけられます。しかも1:18からのフォゴット・ソロはの甘美な味わいは空前絶後。そこから中間部に入るまでの楽想の感じ方、香りの高さは比類なし。そこにドイツ的な暗さなど微塵もありません。また、中間部はアンサンブルに破綻が一切ないのにメカニックな印象を与えないのが実に不思議。これほど音の粒立ちの妙味を感じさせる演奏も珍しいでしょう。
 終楽章は、モントゥーの健康的なアプローチが全開。序奏部の途中20小節(0:57〜)でテンポを落とすのは1958年盤から一貫したアプローチ。提示部の声部間の融合ぶりが音楽的なニュアンスとして結実しているのは見事と言うしかなく、これはコンサートホールのステレオ録音としても奇跡的と言えます。172小節の運命動機の斉奏で少しテンポを落とし、188小節から更にテンポを落とすのもかつての録音と同じですが、最もニュアンスが音楽的にビシッと決まっているのがこの録音!372小節のトロンボーンの4分休符(7:38)は、バーンスタイン盤と同じく2分休符に変更。なお、コーダ11:38でトランペットが派手に音を外しているのに録り直しをしていないということは、これが一発録りだったということが想像されます。
モントゥーの「チャイ5」はRCA盤だけで十分などと言わず、先入観なしでこの復刻盤をお聴きいただければ、上記以外にも気付かされることがきっとあると思いますので、ぜひご体感ください。
 カップリング曲では、「スペイン奇想曲」が必聴。大名演です!各シーンの的確な性格付けと関連付け、無理のないテンポ設定の妙、スペイン的な妖しい空気の醸し出し、養分をたっぷり湛えた音の弾け方など、どれをとっても魅力的。これも、オン・マイク気味の録音がプラスに作用ていることは間違いないでしょう。 【2025年7月・湧々堂】
第1楽章のツボ
ツボ1 中庸テンポ。2本のクラリネットがユニゾンが微妙な色彩の揺れを表出。全体の表情はむしろ淡白でカラッとした感覚で一貫。
ツボ2 低速だが、符点リズムが崩れるほどの低速ではない。クラリネットとファゴットのユニゾンから発する音は確実に色彩を帯びている。
ツボ3 細部にこだわらずにおおらかな印象。
ツボ4 スラーの8分音符は、確実にテンポを落とす旧スタイル。その落とし方が、フレージングを停滞させるほどかなり露骨。まるで、突然現れた幻想に心を奪われているかのよう。
ツボ5 冒頭のスフォルツァンドは無視。ここでも強弱の変化を杓子定規に捉えずおおらかさが優先。それでも、決して呼吸は決して浅くならない巨匠芸。
ツボ6 強弱の変化よりも、音符に込める愛の熱さ一本で通すイメージ。
ツボ7 縦の線が揃っているとは言い難いが、オケの潜在的な純朴サウンドと共にヒューマンさが滲む。
ツボ8 ルバートを極力避けてサラッと進行するのは、昨今の多くの演奏よりも洗練度は上。
ツボ9 16分音符は聞き取れない。ここからテンポアップ。インテンポのまま、そのエネルギーを最後の最後まで維持。
第2楽章のツボ
ツボ10 冒頭の繊細さよりもおおらかさで包み込む。ホルンは危なげはないが、色香を欠きあまりにもぶっきらぼう。純ドイツのオケを象徴する音色。
ツボ11 テンポを溜め込まずに一気に走る。
ツボ12 テンポは変えない。クラリネットは冒頭のホルン・ソロ同様に色香ゼロ。
ツボ13 弱音寄りで、続く主題へ優しく橋渡しをするかのよう。
ツボ14 凄い突進力だが破壊性はなく、ここでも一途さ、熱さが際立つ。
ツボ15 感覚的には淡白。締めくくりだけテンポを落とすのが粋。
第3楽章のツボ
ツボ16 わずかにテンポを落とす。
ツボ17 機能的な機敏さではなく、音の粒立ちの妙味を感じさせる演奏。
ツボ18 見事に一本のラインを形成している!
第4楽章のツボ
ツボ19 テンポは標準的。弦の上手さと味わい深さが印象的20小節からテンポを落とす
ツボ20 かつての録音ではホルンを徹底的に突出させていたが、ここでは完全に脇役に徹している。
ツボ21 テンポは標準的。ティンパニは、58小節に少しアクセントを置いてから一定の弱音を持続するのみ。
ツボ22 完全に無視。
ツボ23 ごく標準的なバランスで、殊更には強調はしない。
ツボ24 主部冒頭と同じテンポ。
ツボ25 抑制の効いたアクセント。
ツボ26 そのままイン・テンポ。
ツボ27 ほとんどインテンポのまま進行。
ツボ28 本来の音価よりも長め。ティンパニは最後に軽くアクセント。
ツボ29 オンマイクの弦の存在感により、輝かしい勝利を演出。
ツボ30 弦は音を切り、トランペットはレガート気味。
ツボ31 弦の音型と合わせる改変型。
ツボ32 いかにも渋いドイツサウンド。音を外し気味だが強靭さは伝わる。
ツボ33 完全なインテンポ進行が清々しい。


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