湧々堂HOME 新譜速報 交響曲 管弦楽曲 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 歌劇 バロック 廉価盤 シリーズ
旧譜カタログ チャイ5 殿堂入り 交響曲 管弦楽 協奏曲 器楽曲 室内楽 声楽曲 歌劇 バロック


器楽曲B〜ベートーヴェン



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ベートーヴェン/BEETHOVEN

WARNER
2564-627672(10CD)
ピアノ・ソナタ全集
ジャン・ベルナール・ポミエ(P)
録音:1990-97年
“不朽の名演奏、「ワルトシュタイン・ソナタ」!!”
これはポミエの底力をまざまざと思い知らされる感動作!中期までの作品においては、威風辺りを払うようなニュアンスよりも、隈取の明瞭なタッチで自然な立体感表出しを基調としており、独特の魅力を放ちます。
「悲愴」終楽章で決して性急に先を急がず、しっかり音の着地を見据えながら丹念に音楽を進行させ、長い余韻の後に主題を回帰させるなどのアプローチは、この作品の新たな一面を垣間見せてくれます。この主題回帰直前で通常より長く音価をとり、フレーズを一旦落ち着かせてから先へ進む解釈は、「月光」終楽章など他の作品でも見られます。
「テンペスト」などはもっと鬼気迫るような解釈も可能でしょうが、ポミエの美しいタッチと余韻を大切にする音楽作りには、この端正な構築を旨とする演奏は深い説得力をもたらします。
ところが、「ワルトシュタイン」になると状況が変わります。明確タッチと一音ごとのニュアンスを確実に表出するスタイルは変わらないですが、光彩陸離たるパワーをかなりあからさまに際立たせ、ベートーヴェンのピアノソナタに並々ならぬこだわりを持つ方をもうなずかせること必至の磐石名演奏!第2楽章の幻想的なニュアンスも必聴。終楽章のテーマの強打鍵の威力は尋常ではなく、ブーレーズとバルトークの協奏曲で格闘技のように闘志を剥き出しにしたあのポミエが出現!しかも音が割れず空転もせず、重量級の安定感は横溢!!
楽想の激変に敏感に反応した第27番も半端な名演ではありません。第1楽章では、地殻の奥底からこみ上げるようなリズムの躍動と呼吸の大きさは絶大な説得力をもたらし、平和な雰囲気に満ちた第2楽章もただ安穏とはせず、作品に内在する深いドラマを強靭な意志で汲み上げているのをひしひしと感じませます。第28番の第2楽章冒頭の激震も、いかにもフランス風なお上品な演奏と思ったら大間違い。
この第28番から最後の第32番までは、この録音セッションの最後に行なわれているのも賢明な配慮ですが、これらの中では、第30番と31番の憧れとノスタルジーを感じさせる解釈と、宿命に対して再び立ち向かおうとする第32番のアプローチの大きな開きにびっくり!決してこれで打ち止めではなく、ここに至ってもまだ自ら進んで苦難に立ち向かおうとする意欲を徹底的に投影した解釈はあまり聴いたことがありません。

ピアノ・ソナタ全集
ジョン・リル(P)  1977年〜1981年 ステレオ録音
BRILLIANT
BRL-
99002(10CD)
“チャイコフスキー・コンクール優勝者リルの最大の功績!!”
オグドン、ダグラスと、チャイコフスキー・コンクールのピアノ部門は、なぜかイギリス人と縁が深いですが、このリルは、ロシア物とともにドイツ音楽でもそのストイックな造型力と強靭な打鍵力を発揮して、実に内容の濃い演奏を展開できる稀有なピアニストの一人です。まずお聴きいただきたいのが「ハンマークラヴィア」。温かい音色と硬質なタッチの見事の使い分けから、アーティキュレーションの厳格さ、フレーズの結尾での息の抜き方に至るまで完全無欠!まさにベートーヴェン後期の音楽に不可欠な神々しい力感を見事に引き出しています。

ピアノ・ソナタ第2番、第26番「告別」、第32番
ギャリック・オールソン(P) 2006年デジタル録音
BRIDGE
BCD-9201
“円熟し続ける華麗なピアニズム!”
オールソンの煌く硬質のタッチの魅力を存分に味わえると共に、作風の異なる3作品の持ち味を完全に汲み取った見識の深さにも思い知らされる一枚です。演奏機会の少ない第2番は、第1楽章冒頭の粒立ちの良さに、優しさと愉悦の風情を込め、この作品の持ち味のこの数小節で凝縮しているかのよう。第2主題はテンポを落として短調の暗さを強調しますが、それが実に自然。バス声部の豪放な打ち込みも魅力満点。展開の両声部の連動の緊密さは息を呑むほど見事で、繊細さと逞しさを内包。第2楽章は、ポツポツとスタッカートで呟く低音部の意味深さと均整を保ったフォルムにご注目を。終楽章も実に有機的。音符のどんな隙間も愛情で満たされ、この作品がこんなにも豊かだったのかと改めて痛感させます。さらに強烈な印象を残すのが「告別」!。第1楽章序奏の瞑想感は近年のオールソンの円熟を余すところなく示しており、祖その深い呼吸と気品が滲むフレージングのセンスの高さに一気に引きこまれます。主部は決してテンポが前のめりになることなく、重心の低い打鍵を堅持。音の隈取りが実に明快で、素晴らしい威風を湛えています。不安が滲む和声の感触をしっかり感じ取った第2楽章も心に触れます。ト長調に変わる副主題さえも、その沈思の表情を引き継ぎ、見事な一体感を表出。終楽章は、ハイレスポンスを誇るオールソンのタッチも魅力が全快!タッチの全てが吟味し尽くされており、無駄になっているだけの音などどこにもなく、ツィメルマンを思わせる強固な造形力も説得力大。第32番も感動的。第1楽章は重低音の強靭な打撃が決して割れずに終始ダイヤモンドのように輝き、全ての声部が全く不純物を伴わずに連動して美しいハーモニー築く様には惚れ惚れします。ここまで音が明快だと、音楽自体に深みを欠きそうなものですが、オールソンにはそれがないのです!第2楽章は至高の雰囲気で満たされた変奏曲。絶品の録音とも相まって、音楽的な情報量が極めて豊富なCDですので、これらの3作品を続けて聴くには心の準備を!

ピアノ・ソナタ第3番*、第7番、第12番
スヴャトスラフ・リヒテル(P) 1975年*、1959年  第3番のみステレオ録音  
PRAGA
PR-354022
“リヒテルの神秘の技が、明るい作品の陰から滲む瞬間!!”
リヒテルが生前に同じ条件の下で集中的にベートーヴェンを全曲録音してくれていたら、不朽の全集が完成していただろうと思うと、散発的な録音ばかりが無数に存在する状況は残念でなりません。特にリヒテル絶頂期の「第3番」のような非の打ち所のない演奏に接すると、なおさらそう思います。第1楽章冒頭の問い掛けるようなフレーズから実にチャーミングで、それでいて媚びることもない、まさにリヒテルだけが可能な究極技に早速ノックアウト!第2主題に入るといきなり空気の匂いまで変化させつつ、フレーズはあくまでも気高く流れるというように、作品のフォルムの緊張と感情の完璧なバランスが最後まで貫徹されているのには唖然とするばかりです。第2楽章も単に優しい語り掛けで済まず、独特の瞑想感を表出。第3楽章は、中間部の打鍵の激流が、世界の混沌を一手に引き受けたような凄みで迫り、このフレーズがいつまでも脳裏を旋回し続けます。しかもそれが過ぎると、何事もなかったかのように毅然としたスケルツォにまた戻るという鮮やかな身のこなし!

ピアノ・ソナタ第4番、第11番、第30番
サミュエル・フェインベルグ(P) 1950年代ー60年代初頭 モノラル録音 
Classical Records
CR-076
“「ソナタ第4番」は空前絶後!フェインベルグの神技!”
Vol.1(バッハの「平均律」)に続く第2弾。録音年の記載がありませんが、かつてトリトーンから出ていたCDと収録曲が全く同じなので、それと同一音源と思われます(1961年、1960年、1953年)。ユージナ、グリンベルグ、リヒテルと、それぞれが比類なきベートーヴェンの世界を繰り広げていますが、フェインベルグのベートーヴェンも神々しさの極地を行く超名演奏!リヒテルの演奏は人を安易に寄せ付けない厳格な宇宙を形成していますが、フェインベルクの場合はそれよりも聴き手に積極的に食い入ろうとする独特のオーラを感じさせます。ピアノを弾いているという印象さえ与えず、ピアノ自体が自発的に音を発するように仕向け奥義はここでも健在。ロシア的なピアニズムという概念を超えた普遍的な芸術がここにあります。まず「第4番」が絶品!演奏頻度の低い作品ですが、この荘厳なスケール感を持って展開される演奏に瀬すると、中期、後期の作品と堂々と肩を並べるべき傑作であることを再認識させられます。第1楽章展開部で拭くあく音楽が沈む込みながらも音の粒が決してつぶれることのない見事な統制力!全体を通じて言えることですが、とにかく発言していないタッチが一つも存在しないという事実にも驚かされます。厳かな儀式を思わせる第2楽章も高潔を極め、2:02からの左手のハッとさせる存在感とその上声部の神ががり的なフレージングの伸縮性にはもう鳥肌!第3楽章の求心力の高いリズムの躍動も鮮烈。いかにも「歌っています」という現象を示すのではなく、抑えがたい表現力が飽和した結果がフレーズのうねりとして迫るのです!中間部のぢラマチックナ音像の浮き沈みにもご注目下さい。「第11番」もタッチの粒立ちが驚異的な素晴らしさ!潤滑油全開のタッチの滑らかさが機械的に響かないばかりか、ここでも素朴な人間味を超越した神々しさが眩いばかりです。第3楽章はフェインベルグ特有のクレッシェンドの妙がたっぷり堪能できます。単に音が大きくなるのではなく、重量感もタッチの色の濃さも全ていっぺんに増幅させるマジックは比類なし。それに比べ、さすがに「第30番」は抑制が効いていますが、峻厳なニュアンスはここでも横溢。第2楽章は他の演奏が全て子供のように思えるほど、異様な緊迫感。終楽章において、各変奏の継ぎ目を全く意識させない緊密な連動力を見せる点にも要注目。この復刻も「平均律」同様、非常良好。



CLASSIC ARCHIVE
BBCL-4185
チェルカスキー/1974年オールドバラ・ライヴ
ラモー:ガヴォットと変奏曲イ短調
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
メンデルスゾーン:幻想曲Op.28
ショパン:夜想曲Op.55-1、スケルツォ第2番
スクリャービン:前奏曲Op.11-5/Op.11-10
チャイコフスキー:夜想曲Op.19-4
リスト:ドン・ジョヴァンニの回想
シューラ・チェルカスキー(P)

録音:1974年6月24日スネイプ・モルティングス、コンサート・ホールオールドバラ音楽祭ライヴ(ステレオ)
“おおらかな雰囲気の中に漂うベートーヴェンの闘志”
まず何と言ってもベートーヴェンが聴きもの!自由奔放なチェルかスキーのイメージとは異なり、淡麗な味わいに満ちており、テンポの変動を抑えて端正な造型を守った安定感が独特の風格美を生んでいます。第2楽章は古今を通じて最も感動的な演奏の一つ。弱音による繊細なフレージングに頼らず、大きな構えをで常に前向きな音楽として捉えながら、中間部では一転して濃厚な陰影を湛えた別世界へ誘います。そこから主題へ回帰する際の切り替えと流れの自然さがまた絶妙の極み!終楽章な内声部の意味深さが尋常ではなく、恣意性を全く感じさせずに全ての声部が瑞々しく立ち上がり、色彩的な魅力を湛えたタッチとともに独特の深遠な仕立てています。2:58からの音の色合いが一瞬にして変わる瞬間は、チェルカスキーの真骨頂!これほど変化に富みながら全体として確固としたドラマと再現し尽くす奥義は、ドイツ本流の精神性重視のスタイルとは一線を画しますが、何度でも聴き返したくなるこの演奏の魅力は他に並ぶものがありません。
ショパンの夜想曲Op.55-1も、こんなに多様なニュアンスで彩られた演奏を他に知りません。暗く沈み込まず、一見楽天的とさえ思えるフレージングとタッチの奥底には常に涙が溢れており、その涙を支えきる人間的な器量の大きさにまず打たれます。


Pavane
ADW-7071(2CD)
廃盤


ADW-7073(9CD)
2016年新リマスター
限定生産

ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、14番「月光」、22番、23番「熱情」、29番「ハンマークラヴィア」、31番
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集(全32曲)
エドゥアルド・デル・プエヨ(P)

録音:1976年−1977年
※2016年新リマスター(Equus, Brussels)
“知られざるベートーヴェンの権威プエヨが描く、筆舌に尽くしがたい壮絶なドラマ!”
かつて聴いたベートーヴェンのソナタの全ての演奏の中で、最も感動したのがコレ!プエヨは1903年スペイン生まれのベルギー育ち。お国ものだけでなく、ベートーヴェンの権威としても知られ、レクチャーも頻繁に行っていたようですが、演奏にはそんな権威性や学究的な感触は皆無で、音楽の魂そのものとして心の奥深くに迫るものです。とにかく、全ての要素が他では味わえないニュアンスで彩られおり、タッチそのものが音楽的と言っても過言ではありません。「悲愴」第1楽章の開始は、強打で圧倒するのではなく、深く内省へ向かう響きがいきなり体に浸透します。この序奏を聴いただけでも、あまりの音の意味深さに立ち上がれなくなるほどです。第2主題に差し掛かると、微妙にテンポを落として翳りを見せ、肝心の要所のみに用いられる強打の威力と深みにも言葉を失など、あまりにも豊かなニュアンスが溢れているために造型も崩壊寸前ですが、結果的に巨視的な構成も磐石という至芸!第2楽章は、全てのタッチが黄昏色。終楽章も最初の10秒で涙!この閃きをなんて説明したらよいのでしょう!!「熱情」も、目の前にベートーヴェンが仁王立ちしているようなリアルさ!感覚的な綺麗事など全くお呼びではありません。ピアノと一体化するとはどういうことなのか、この終楽章を聴くとその本当の意味を思い知らされます。あまりにも多すぎるニュアンスの魅力をこれ以上言葉で説明することはできません。【湧々堂】
※ADW-7073(9CD)は、全32曲の全集です。

ピアノ・ソナタ第23番「熱情」、第18番第17番「テンペスト」
スヴャトスラフ・リヒテル(P) 1965年、1959年 モノラル・ライヴ録音
PRAGA
PR-354023
“リヒテルの「熱情」の中で、最も奔放なパッションが炸裂した激演!”
リヒテルの「熱情」はどれも激烈な演奏ですが、このプラハ・ライヴは、奔放なパッションとリヒテルならではの凝縮力の強い構築力が完全にブレンドされた演奏として忘れるわけには行きません。感情の激流はとどまるとことを知らず、しかも一定のフォルムの中で見事に均整が保たれているのは、ゆるぎない集中力の賜物。コーダでの運命動機の強打もピアノで出せる限界に達しており、これ以上の激烈さは望めません。第2楽章でさえ、透徹しきったタッチを貫きながら、安らぎとは無縁のピンと張り詰めた空気が支配。終楽章は当然のようにも最高のヴォルテージで圧倒しまくりますが、決して闇雲に音を乱射しているのではなく、イメージした音を更に自分の中で吟味する恐るべき力量が、更に感動を倍増させるのです。全くテンポを緩めずに、インテンポを通したまま全曲を締めくくる最後の数秒だけは、完全に枠を突き破り、制止不可能な激流の大放出!録音はモノラルですが、そんな激烈ぶりを十分に伝えています。

ピアノ・ソナタ第26番「告別」、第21番「ワルトシュタイン」、第23番「熱情」
メルヴィン・タン(フォルテピアノ) 1987年 デジタル録音
VIRGIN
5611602[VI]
“タン愛用の名器との一体感が生み出す至福のベートーヴェン!”
デレック・アドラム製作(1983年)によるナネッテ・シュトライヒャーを使用。フォルテピアノによるベートーヴェンの録音の中でも、楽器の音色の美しさ、そのニュアンスを伝える録音の良さ、そして演奏者のセンスと、全ての条件が揃っている点で、まず筆頭に上げたいCDです。どこまで行っても瑞々しいアーティキュレーションに乗せた情感が溢れ、心を捉え続けます。古楽器奏者の中には、学術的な研究の成果を伝えるだけで、肝心の音楽が湧き出て来ないことがありますが、タンに限ってはそういう心配は無用です。「告別」第1楽章の序奏の語り掛けから、楽器のまろやかな音色と一体となって真の音楽が溢れ出ています。主部以降の自然な推進力も素晴らしく、屈託のない表情を湛えているのも魅力。第2楽章は、楽器の音色自体が音楽的なニュアンスで一杯!タン愛用の楽器が、タンのためにひっそりと語り掛けているような風情が印象的です。急に太陽が降り注いだような終楽章の開始からは、楽器の表現容量と、タンの表現意欲が全開で、見事な緊張に彩られた音楽が展開されます。「ワルトシュタイン」の冒頭の細かい連打音の全てに息づく生命感とニュアンスも、現代のピアノではなかな表出し得ない魅力。終楽章も、冒頭の得も言われぬ幻想性や、しなやかな呼吸の沈静感(1:43以降など)を始めとして聴き所が満載。「熱情」は、俊敏なレスポンスと気品を失わないダイナミズムが最高!ここでも、この楽器をあえて使わなければならない必然性をひしひしと感じさせます。終楽章のコーダは、楽器の特性上、音量音圧を頼りに盛り上げるわけに行かないので、タンのタッチのコントロールと熱い共感だけで音楽を芯から加熱させる手腕が、いかんなく証明されることとなります。

ピアノ・ソナタ第3番、バガテルOp.126-1,4,6、ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」
スヴャトスラフ・リヒテル(P) 1975年6月11日オールドバラ音楽祭(ステレオ・ライヴ)
BBC LEGENDS
BBCL-4052
’70年代のリヒテルを凄さを象徴する恐るべきベートーヴェン!”
リヒテルの「ハンマークラヴィーア」は、同年同月18日のロンドン・ライヴ(Stradivarius)、同年1月のプラハ・ライヴ(Praga)と共に全てステレオ録音で素晴らしい演奏が堪能でき、とても甲乙など付けられませんが、初CD化のこのオールドバラ音楽祭ライヴもこれまた絶品!第1楽章から物凄い意気込み。思索に耽るようなリヒテルではなく、アグレッシブな表現意欲をが止め処もなく溢れ、展開部ではさらに推進力がアップ。第2楽章の中間部の取り付かれたようなエネルギーの放射力も絶頂期のリヒテルならではの素晴らしさ。第3楽章はまさにリヒテルのためにあるような音楽。瞑想の空気が独特の緊張感を持って醸し出されますが、透徹されたタッチから可憐なロマンの息吹が感じられ、特に8:20程から繰り広げられるまるで着地点が見えない長いフレーズでは、微妙なタッチの色合いの変化、感情バランスを一貫して保持する力量に、リヒテルの凄さを改めて痛感せずにはいられません。終楽章は鉄壁のリヒテル・マジック!恣意的な演出感などもちろん一切ないにもかかわらず、曲全体の造型が極限まで凝縮された形で突きつけられ、聴き手に有無を言わさぬ訴求力を発揮。10:28に飛び込む低音域と上声部との完璧なバランスが織り成す怒涛のうねりも必聴!「第3番」もPragaのライヴ盤と双璧の尋常ではない名演。バガテルでは、Op.126-4があまりにも激烈!打鍵に一切の綻びがないばかりか、急激な強弱の変化にも音像が全くぶれずに曲全体が弾丸と化して襲い掛かるのです。録音のとても明瞭。

ピアノ・ソナタ第27番、第28番*、第29番「ハンマークラヴィア」#
スヴャトスラフ・リヒテル(P) 録音:1965年6月2日プラハ(モノラル)
1986年5月18日プラハ(ステレオ)*
1975年6月プラハ(ステレオ)#
PRAGA
PR-354024
“全てステレオで聴ける、リヒテルの至高の芸術の結晶!



PRAGA
PRDDSD
-350065
(1SACD)

約10年ごとのリヒテルの芸風の変遷を知ることができるCDとしても貴重。どんなに音楽が激高しても内省へ向かう彼の音楽志向は基本的には変わっていませんが、その志向性が年を追うごとに深化しているのが確認できます。第28番第2楽章の主要動機のリズムの沸き立ちには楽天性など見せずに圧倒的な威容を示し、中間部の憧れに満ちたフレーズに入っても、来るべき動機の再現に備えて、厳しい緊張の色合いを失いません。第3楽章は宗教的ともいえる瞑想の空気が支配。終楽章での不動の意志が漲る強打鍵は、全体を締めくくるに相応しい存在感で鳴り響きます。更に「ハンマークラヴィア」は、神がかり的名演!終楽章のラルゴからアレグロに移行するまでの現実離れした美しさは例えようもなく、3:11辺りからの音楽の異様なまでの熱い凝縮は、全ピアニストが打ちのめされること必至!

ピアノ・ソナタ第28番、第29番「ハンマークラヴィア」
アブデル・ラハマン・エル・バシャ(P) 1993年 デジタル録音
Forlane
UCD-16685
“自然な流れの中で、ベートーヴェンの精神が醸成される名演奏!”
まず音色の美しさが耳を捉えます。28番は、これ見よがしの表情はどこにもなく、淡々と音符を追っているようでありながら、内面には一本芯が通り、無理のない息遣いで聴き手の意識を引きつけて離しません。第2楽章は鮮烈!比較的遅いテンポですが、リズムを隅々まで躍動させると同時に厳格な制御が行き届き、今までリズムに乗りすぎているピアニストがいかに多かったか、改めて思い知らせれます。終楽章中間部のフーガでは、エル・バシャの絶妙なバランス感覚と集中力が絶頂に達し、コーダまで緊張を緩めずに堅固な構築力を発揮し続けます。美音と不断の構築力を兼ね備えた彼が、ピアノ作品のエレベストと称される「ハンマークラヴィア」を弾くのですから、これが感動的でない訳がありません。冒頭から激しく切り込んでスタートダッシュをかけるという真似はせず、実にたっぷりとしたゆとりと威厳を持った音像を繰り広げ、いきなり感動!展開部の高潮点で、エル・バシャ特有の神々しい色彩を放ちますが、これがまた、体全体包み込むような不思議な包容力を持っていせまるのですからたまりません。第28番同様に、この第2楽章のリズムの跳躍も厳格な緊張と芸術的な香りを放ち、熟成された音楽性と完璧な技巧が一体となった凄みを発揮。終楽章冒頭の神秘と瞑想の空気も独特のもので、後は高潔極まりない音楽の流れに身を委ねるしかありません。

ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィア」、ピアノ・ソナタ第28番
ウラディミール・フェルツマン(P) 1997年 デジタル録音
Music Masters
01612-671072(廃盤)
“フェルツマンが出した「ハマンマークラヴィア」の画期的結論!”
Nimbus
NI-2561(1CDR)
フェルツマンは、1992年にこのレーベルへの移籍第一弾として、ベートーヴェンの後期3大ソナタを録音しましたが、それを聴いて驚嘆された方も多いことでしょう。それから6年を経て録音されたのがこれです。まず冒頭の和音が鳴った瞬間、「美しい!」と叫ばずにはいられません。第2楽章は、あっという間に終わってしまうのが残念なくらい、短い曲の中に無限にニュアンスを込め抜く彼の真骨頂。完熟のピアニッシモから終楽章の巨大なフーガによる美音の洪水に至るまで、息つく暇を与えません。第28番も立派で、ここでも洗練された美音と、意味を持って躍動するリズムが冴え渡ります。その天性の音楽センスに無限の可能性を感じずにはいられない一枚です。

ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィア」、第30番、第31番、第32番、6つのバガテル
クリストフ・エッシェンバッハ(P) 1976年〜1978年 ステレオ録音
EMI
5854992
(2CD)
“気負わずに瑞々しい情感が溢れ出す、エッシェンバッハのベートーヴェン!”
リヒテルのような深いと洞察に貫かれたピンと張り詰めた演奏に疲れたらコレ!エッシェンバッハのイマジネーションの豊かさは、指揮活動をするようになってから広く認識された感がありますが、ピアニストとして残した録音は、メンデルゾーンにしてもショパンにしても、作品のフォルムを大切にしながらも、閃きに満ちたニュアンスを敷き詰めた素晴らしいものばかりです。「ハンマークラヴィア」は、この大作に対決を挑むような気負いを見せず、まるで初期の作品のような瑞々しさが横溢!第1楽章展開部の盛り上がりは十分に熾烈ですが、エキセントリックならず、全体を貫く有機的な流れを崩すことはありません。第3楽章は、ショパンのプレリュードでも感じ取れる優しい沈思の佇まいが絶品。深刻に身構えずに、作品の息吹が自然に溢れ出るのは、最後の三大ソナタでも同じですが、この3曲は更なる名演!「ハンマークラヴィア」の2年後のこれら録音では、彼の至純のタッチとひたむきな表現力が一層生きています。「第30番」は、第1楽章から春風のような清々しさ!第2楽章はかなり快速のテンポですが、刃物を振り回すようないきり立ちとは無縁。「第31番」は、出だしから「これだ!」と膝を打ちたくなる音色美、感情バランスの妙!ひときわ神々しい光を放っているのが「第32番!この第1楽章に限っては、意を決して火の中に飛び込むような熾烈な没入を見せ、異常な程の重量感を伴っての強打鍵も全く浮つかずに、凝縮しきった熱いドラマが展開され、その分第2楽章の安らかなニュアンスが一層際立つ結果となっています。これをリヒテルの初音源だと言ってお知り合いの人を騙し討ちしてみてみましょう。まず疑う人はいないでしょう。それくらい音楽が深いのです!


Claves
50-2903
ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集
ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109、ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Op.110
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111
セドリク・ペシャ(P)
録音:2009年1月2日-4日
“今の感性に全てを掛けた大胆な挑戦が完全結実!”
セドリク・ペシャは1976年スイス生まれ。2002年のジーナ・バッカウアー国際ピアノ・コンクールで優勝。それにしても30代前半にしてベートーヴェンの最後のソナタを録音してしまうとは何と大胆な!そう思いつつ聴き始めるとたちまち虜に!一音ごとに込められた共感の強さは言うまでもなく、各楽想を緻密に連携させて大きなうねりを形成する力量は全くブレがなく、一定の緊張を最後まで貫徹させながら、作品の凄さも改めて思い知らせれる演奏を展開してくれるのです。「30番」、の」第2楽章の激しい楽想の中で音色バランスを瞬時に感得する様を目の当たりにすると、まさにこの時に録音して良かったと心から痛感させるものがあります。終楽章の深い沈思は、変に老成したような嘘っぽさがなく、実に素直な音運びの中に純粋な情感の湧きたちを感じさせます。表面的には何もしていないように見えて、音楽の魅力の伝えることだけに専心する姿勢によって、かくも心に深く迫る音楽を再現できるという最高の見本です。「31番」も一切ニュアンスに誇張なし。第1楽章は音楽の流れの何と清潔なこと!第2楽章は、レガートとスタッカートを対比させながら提示される特徴的な主題において、鮮烈なスタッカートの挿入を強調する演奏が多い中、ペシャはそんなピンポイント的な操作には目もくれず、ただただ音符を音化させるだけで音楽全体を浮揚させているのです。そして圧巻は「第32番」!第1楽章冒頭を意外なほどパッション剥き出しで開始しますが、その切迫感が主部に入ってからも生かされており、主題を一切もったいぶらずに進行させる意志の力に一気に鳥肌が!この間合いの素晴らしさは何としてもお聴き逃しなく!フォルテのタッチは芯からいきり立ちながら決して割れず高潔の極み。展開部のフーガの立体的な構築の説得力がこれまた破格!交響曲の大曲を聴く思いです。第2楽章は、ここまでの極限に達した感情の高まりをゆっくりと吸収するような実に壮大な受け皿として空間を醸し出します。ジャズ的なシンコページョンも唐突さを感じさせないというの驚異的!そして、15:04から延々と続くトリルの何という意味深さ!

ピアノ・ソナタ第30番、31番、32番
スヴャトスラフ・リヒテル(P) 1972年、1965年、1974年 モノラル・ライヴ録音
Revelation
RV-10096
“リヒテル絶頂期!強靭なタッチと深々とした詩情の極致!!”
リアルなリズムの沸き立ち、俊敏な強弱対比の背後に深い祈りを込め、聴き手を不思議な呪縛に引きずり込む、リヒテル絶頂期のピアニズムが凝縮されています。第30番の第2楽章は、冒頭の和音の鋼鉄の強打鍵と共に凄まじい速さで突っ込みながら、造型は極めて頑丈。第31番も、スケルツォ的な軽さとはきっぱり決別した第2楽章で、リヒテルだけが可能なテクスチュアの厚み、底なしの瞑想空間にどっぷりハマります。異様な集中力で変奏に豊かな流れと明確な輪郭を持たせた終楽章も完璧なフォームで、最後のフーガ以降でタッチの輝きが一層冴え渡るあたりも圧巻!音質も良好です。

ピアノ・ソナタ第31番シューマン幻想曲、バッハ:パルティータ第2番
イリーナ・メジューエワ(P)  1998年 デジタル録音
コロムビア
COCO-80872
“ドイツの伝統様式とロシアン・ピアニズムの幸せな融合!”
これまでロシア音楽を中心に録音を続けてきたメジューエワが、初めて本格的に挑んだ純ドイツ作品集。これらの3曲を通じて、作曲家の魂を何よりも尊重し、良き表現者であろうとする彼女の意気込みを感じると共に、決して大上段に構えることなく、持ち前の透明感の響きを絶やさず、見事に音楽を再構築していくあたりが、デュー時からの大きな飛躍を物語っています。ベートーヴェンでは、第2楽章での表現の深さが心を捉え、いっそう悲劇性を見せる第3楽章のフーガは、まさに絶世の美しさ!シューマンも、ポリフォニックな第T楽章の展開の妙、内燃するエネルギーと葛藤する第2.第3楽章の深遠な世界の表出など、衝撃の連続です。

「エロイカ」の主題による変奏曲とフーガ、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
サー・クリフォード・カーゾン(P)ハンス・クナッパーツブッシュ(指)VPO 1971年 1957年 ステレオ録音
DECCA
4523022
“高潔タッチと精神力が漲る、カーゾンのソロ録音の最高峰!!”

4756786(6CD)
カーゾンが残した数少ない録音は、どれも彼の真摯なピアニズムを味わえる逸品揃いですが、この曲は協奏曲やソナタの録音の影に隠れがちなだに、一層声を張り上げて素晴らしさを訴えたい超一級の芸術品です!冒頭和音の一撃からしてひれ伏したくなる鉄壁のニュアンス!序奏部でテーマ(オケの低音旋律)が二声から四声へと細やかに発展していく様を克明に描くのもカーゾンならではですが、その語り口の気品と意味深さ、内声の緊密な絡みとリズムのセンス、風格美は例えようもありません。第3変奏の音の跳躍の生命力、第4変奏の強弱対比の俊敏さには、表面的な技巧の臭いなど皆無。第7変奏で現われる重低音の連打が十分な威容を備えながら、典雅に轟かせるなどという技も、そうそう耳にすることができません。第13変奏の高音の装飾音が瑞々しく跳ね上がるのは、まさにリズムの本質と言わずにいられません!厳格なフォルムの中で熱い精神が無限に広がる終曲は、ベートーヴェンの天才的な発想力を思い知らせれ、感動も極限に達します。この曲と演奏の魅力にとりつかれたら、他の演奏の事など考えられなくなってしまうことでしょう。また録音も、カーゾンの録音の中でも最高位に位置するものです。
クリフォード・カーゾン/デッカ・レコーディングス1936-71(4756786)の内容
シューベルト(リスト編):さすらい人幻想曲/ヘンリー・ウッド(指)クイーンズ・ホールO[1936年録音]、
モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番&第2番/アマデウスSQメンバー、ノーバート・ブレイニン(vn)、ピーター・シドロフ(va)、マーティン・ロヴェット(vc)[1952年9月9〜11日録音]
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番/ボイド・ニール(指)ナショナルSO[1945年12月12日録音]、
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/エンリケ・ホルダ(指)ナショナルSO[1946年6月5日モノラル]、
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番/ゲオルグ・ショルティ(指)VPO[1958年10月14〜17日ステレオ録音]
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番/エードリアン・ボールト(指)LPO[1955年6月モノラル録音]
グリーグ:ピアノ協奏曲/オイヴィン・フィエルスタード(指)LSO[1959年6月ステレオ録音]、
ブラームス:ピアノ協奏曲第2番/クナッパーツブッシュ(指)VPO1955年7月26日モノラル録音]、
リスト:ピアノ・ソナタロ短調、リスト:愛の夢第3番、忘れられたワルツ第1番、小人の踊り、子守歌S174/[1963年9月ステレオ録音]、
シューベルト:即興曲D899-3,4[1964年6月ステレオ録音]、即興曲D935-2、楽興の時D780、ベートーヴェン:「エロイカ」の主題による変奏曲とフーガ[以上、1971年2月ステレオ録音]



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