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第1回

イリーナ・メジューエワ
(ピアニスト)



プロフィール
1975年、ロシアのゴーリキー生まれ。グネーシン特別音楽学校とグネーシン音楽院にてウラジーミル・トロップに師事。1992年、ロッテルダムのE.フリプセ国際コンクールで優勝。翌年、Erasmusレーベルよりデビュー盤をリリース。1996年、コロムビアより日本デビュー盤がリリースされる。現在のCDリリースは、主に若林工房が行なっている。現在、東京在住。落語、歌舞伎など、日本の伝統文化にも造詣が深い。

メジューエワの魅力
 テクニックは凄いけど音楽的な感銘が薄い演奏家が少なくない中で、メジューエワは、表面的な技巧はもとより、自分の個性を十分に発揮しながらも決して独善的にならず、あくまでも作曲家が描いたイメージと作品の様式を大切にして、それらをバランスよく融合させ、作品に潜む生命力に息を吹き込む能力にかけては、現役ピアニストの中でもトップクラスだと思います。そのバランスが完璧にとれたときの演奏は、シューベルトの第16番のソナタでも明らかなように、目の前の演奏の素晴らしさ以上に、作品自体の凄さが物凄い存在感で立ち昇り、得も言われぬ感動に誘ってくれるのです。そこには華奢な体からは想像もできない強靭な集中力と熱い共感が働いていることは言うまでもありませんが、何よりも人並み外れた「音の意味を感じる力」がなくては、とてもここまでの演奏は実現し得ないと思うのです。
 セザンヌの晩年の作品に『りんごとオレンジ』という絵があります。一つのキャンバス中に多視点から捉えた印象を凝縮し、一見無機質に置かれているだけの果実の一つ一つに存在感を与えた画期的な絵画として有名ですが、ここ最近のメジューエワの演奏を聴くと、このセザンヌの視点と、メジューエワの作品へのアプローチに、共通するものを感じずにはいられません。
 コロムビアを離れてからは、ますます自分の納得のいくものをタイミングを逃さずに演奏・録音できる環境にあるようですので、今後もその類い稀な感性で、音楽ファンに深い感動を与え続けて欲しものです。

全ディスコグラフィー
曲目 レーベル CD番号
シューベルト:ソナタ第14 D784/バッハ:イギリス組曲第2番/ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Erasmus WVH079
メンデルスゾーン:7つの性格的小品 Op.7より第1〜4番/ショパン:ロンド Op.16、スケルツォ第1番/メトネル:6つのおとぎ話 Op.51 コロムビア

COCO-80355

メンデルスゾーン:ロンド・カプリッチオーソ、幻想曲 Op.28、スケルツォ・カプリッチオ、前奏曲とフーガ Op.35-1、無言歌 Op.19-1、同 Op.67-5、同 Op.30-6、厳格な変奏曲 コロムビア

COCO-80567

ラヴェル:《鏡》/ショパン:スケルツォ第2番、2つの夜想曲 Op.55/スクリャービン:ソナタ第2 Op.19《幻想ソナタ》 コロムビア COCO-80785
バッハ:パルティータ第2番/ベートーヴェン:ソナタ第31番/シューマン:幻想曲 コロムビア COCO-80872
ギボンズ:パヴァーヌ/ベートーヴェン:ロンド Op.129《なくした小銭への怒り》/ウェーバー:舞踏への勧誘/シューベルト:楽興の時 第3番/シューベルト=リスト:ウィーンの夜会 第6番/リスト:小人の踊り、コンソレーション第3番/ショパン:小犬のワルツ、嬰ハ短調のワルツ Op.64-2/ルビンシテイン:天使の夢/チャイコフスキー:トロイカ/ファリャ:火祭りの踊り/ドビュッシー:月の光/ラヴェル:水の戯れ コロムビア

COCO-80873

トネル作品集1〜メトネル:おとぎ話 Op.20-1、同 Op.34-2、同 Op.14-2、4つのおとぎ話 Op.26、おとぎ話ソナタ Op.25-1、優美な舞曲 Op.38-2、祝祭の舞曲 Op.38-3、夕べの歌 Op.38-6、春 Op.39-3 コロムビア COCO-70756
2004.12.22
再発売
モーツァルト:ソナタ イ長調 KV331《トルコ行進曲付き》、メヌエットとアレグロKV15、サリエリの主題による6つの変奏曲 KV180、幻想曲 KV397、アレグレットの主題による12の変奏曲 KV500、自動オルガンのためのアンダンテ KV616 コロムビア COCQ-83269
メトネル作品集2〜 8つの心象風景 Op.1より第1,,,8曲、ソナタ 変イ長調 Op.11-1、おとぎ話 Op.9-2、同 Op.42-2、同 Op.42-3、忘れられた調べ Op.39 コロムビア COCQ-83385
バッハ:イタリア協奏曲、カプリッチオ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》、フランス組曲第5番、イギリス組曲第2番/トッカータ BWV914 コロムビア COCQ-83386
グリーグ:抒情小曲集〜:アリエッタ Op.12-1、ワルツ Op.12-2、妖精の踊り Op.12-4、子守歌 Op.38-1、蝶々 Op.43-1、恋の曲 Op.43-5、春に寄す Op.43-6、小人の行進 Op.54-3、夜想曲 Op.54-4、ゲーゼ Op.57-2、郷愁 Op.57-6、フランスのセレナード Op.62-3、夢想 Op.62-5、家路 Op.62-6、サロン Op.65-4、トロルドハウゲンの婚礼の日 Op.65-6、あなたのおそばに Op.68-3、山の夕べ Op.68-4、小妖精 Op.71-3、森の静けさ Op.71-4 コロムビア COCQ-83472
メトネル作品集3〜 ソナタ=エレジー Op.11-2、3つの小品 Op.31、ソナタ=バラード Op.27、エレジー Op.59-2 コロムビア COCQ-83519
シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、アラベスク、子供の情景 コロムビア COCQ-83590
ONTOMOピアノピース・ファイル1〜 エリーゼのために(ベートーヴェン)/亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)/幻想即興曲、別れの曲(ショパン)/愛の夢 第3番(リスト)ほか コロムビア

COCQ-83503

ONTOMOピアノピース・ファイル2〜 トロイメライ(シューマン)/3つのジムノペディ(サティ)/月の光(ドビュッシー)/energy flow(坂本龍一)/悲しい鳥(モンポウ)/亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル)ほか コロムビア

COCQ-83504

ONTOMOピアノピース・ファイル3〜 楽しき農夫(シューマン)/野バラに寄せて(マクダウェル)/花の歌(ランゲ)/春に寄す(グリーグ)/狩の歌(メンデルスゾーン)/美しく青きドナウ(J.シュトラウスII世) コロムビア

COCQ-83505

ONTOMOピアノピース・ファイル4〜 エンターテイナー(ジョプリン)/3つの前奏曲(ガーシュウィン)/ゴリウォーグのケークウォーク(ドビュッシー)/チルドレンズ・ソング No.1(コリア)/タンゴ(アルベニス)/グラナダ(グラナドス)ほか コロムビア COCQ-83506
ONTOMOピアノピース・ファイル5〜 メヌエット ト長調(バッハ)/小さな風車(クープラン)/メヌエット(ラヴェル)/タンブーラン(ラモー)/ワルツ Op.39-15(ブラームス)、別れのワルツ(ショパン)/舞踏への勧誘(ウェーバー)ほか コロムビア

COCQ-83507

ONTOMOピアノピース・ファイル6〜 ティロル風ワルツ(プーランク)/ルーマニア民俗舞曲(バルトーク)/マズルカ Op7-1Op.68-3(ショパン)/ユモレスク(ドヴォルザーク)/アニトラの踊り(グリーグ)/ゴパーク(ムソルグスキー)ほか コロムビア

COCQ-83523

ONTOMOピアノピース・ファイル7〜 楽興の時 第3番、即興曲 Op.90-2、同 Op.90-4、同 Op.142-2(シューベルト)/間奏曲 Op.118-2(ブラームス)/2つのアラベスク(ドビュッシー)、無言歌 第3番(フォーレ)ほか コロムビア

COCQ-83524

ONTOMOピアノピース・ファイル8〜 お人形の夢と目覚め(エステン)/フランスの古い歌(チャイコフスキー)/雪の日のソリのベル(ギロック)/オルゴール(リャードフ)/キラキラ星変奏曲(モーツァルト)/トルコ行進曲(ベートーヴェン)/人形のセレナーデ(ドビュッシー)ほか コロムビア

COCQ-83525

ONTOMOピアノピース・ファイル9〜 歌の翼に、春の歌(メンデルスゾーン)/セレナード(シューベルト)/子守歌(ブラームス)/ホフマンの舟歌(オッフェンバック)/ソルヴェーグの歌(グリーグ)/サマータイム(ガーシュウィン)/涙のパヴァーヌ(ダウランド)ほか コロムビア

COCQ-83523

ONTOMOピアノピース・ファイル10〜 エコセーズ(ベートーヴェン)/飛翔(シューマン)/ラプソディ Op.79-2(ブラームス)/軍隊ポロネーズ、華麗なる大円舞曲、革命のエチュード(ショパン)/ラ・カンパネッラ(リスト)ほか コロムビア

COCQ-83527

メトネル作品集〜 ソナタ ト短調 Op.22/忘れられた調べ Op.40/牧歌ソナタ Op.56 音楽之友社 OCD-0055
ショパン:24の前奏曲 Op.28、前奏曲 嬰ハ短調 Op.45、同 変イ長調 遺作 クリエイティヴD

PRGT-7001

ショパン:スケルツォ 全4曲/即興曲 第1 Op.29/ノクターン 第20番(遺作) 若林工房 WAKA-4101
ベートーヴェン:ソナタ第17番《テンペスト》/シューマン:幻想曲 Op.17 若林工房 WAKA-4104
シューベルト:ソナタ第16 D845/ベートーヴェン:ソナタ第28 若林工房 WAKA-4105
メトネル:ソナタ ホ短調 Op.25-2 《夜の風》、6つのおとぎ話 Op.51
メジューエワ本人が語る、このCDの聴きどころ
若林工房 WAKA-4107
ショパン:ポロネーズ 第1番、練習曲(3曲)〜「エオリアン・ハープ」、「別れの曲」、「革命」、ムソルグスキー:「展覧会の絵」、メトネル:おとぎ話 Op26-3、ショパン:前奏曲集〜Op28-11,7 若林工房 WAKA-4108

サロン・コンサート鑑賞記
【当日のプログラム】
//
1,シューマン:幻想小品集Op.73
2,ショパン:ポロネーズ第1番
3,ショパン:ワルツOp69-1
4,ショパン:ワルツOp70-2
5,ショパン:練習曲Op10-3「別れの曲」
6,ショパン:練習曲Op25-12
7,バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番
8,ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番

タマーシュ・ヴァルガ(Vc)、
イリーナ・メジューエワ(P)
 2004年11月10日、都内某所で行われたメジューエワとタマーシュ・ヴァルガ(ウィーン・フィル主席チェロ奏者)のミニ・ジョイント・コンサートに行って来ました。ヴァルガ氏は、ゲルギエフとの来日公演の合間を縫っての参加で、メジューエワの魅力のみならず、あのウィーン・フィル・サウンドの一端に直接触れることができたことは、貴重な体験でした。
 伴奏者としてのメジューエワも初体験なうえに、この二人のコンビネーションについても全く予測できないだけに、期待と微かな不安を抱えたまま1曲目のシューマンが鳴り始めたのですが、まるでもう10年来のコンビのような絶妙なコンビネーションで迫ってくるので、思わず身を乗り出してしまいました。ヴァルガ氏のまろやかな美音と伸びやかなフレージングにメジューエワが完全に呼吸を合わせ、その一体感から生まれる絶妙な色彩がホールの隅々にまで響き渡りました。その緊密な連携と掛け合いの妙は最後のベートーヴェンで遂に全開となり、メジューエワの硬質なタッチとヴァルガのマイルドな音色とのブレンド感も一層引き立ち、感動の極み!第1楽章展開部の細かいパッセージに漲る緊張には息を呑み、第2楽章もリズムの沸き立ちが見事。終楽章冒頭のカンタービレは、ベートーヴェンの精一杯の歌心を徹底的に汲み上げ、アレグロに入ってからは、情熱を発散させつつ気品も湛えるという素晴らしさに酔いしれました。メジューエワのピアノは伴奏者としての任務を全うしながら、決して裏方に徹するのではなく、自己主張をしながらチェロを引き立てる術を心得ていることにも驚かされました。
 さて、一番のお目当てだったメジューエワのソロはと言うと、これまた絶品!中でも「ワルツOp.69-1」は、ペダルをたっぷりと使いながら音が混濁せず、かっちりとしたフォルムを絶やさずに気品を漂わせるメジューエワの魅力が完璧な形で流れ、特に印象的でした。終演後、「ご自身も満足だったのでは?」とかなり確信を持って尋ねてみると、なんと「いやいや、まだまだですよ」というご謙遜。こんな言葉をさらっと言うあたりに、彼女が心から日本を愛していることを思い知ったのでした。「練習曲Op.25-1」も、呼吸のうねらせ方と格調高い雰囲気作りがり見事でしたし、「別れの曲」では、中間部でペダルを控えめにして、リズムに瑞々しさを与えるのも、メジューエワらしい配慮として鮮烈な印象を残しました。 

メージューエワの愛聴盤・ベスト5 
・ブラームス:交響曲第3番/クナッパーツブッシュ(指)VPO【ORFEO*IEFEOR-329931】
・ベートーヴェン:弦楽四重奏曲集/ブダペストQ【SONY*MH2K-62870(2CD)】
・シューベルト:弦楽五重奏曲/カザルス、ヴェーグ、ほか【国内盤フィリップス*PHCP-9611】
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番ほか/リヒテル(P)【DOREM* DHR-7766】
・ショパン作品集/コルトー(P)【EMI* CZS-7673592(6CD)】  

メジューエワへの直撃インタヴュー
--今日はお時間を割いていただいてありがとうございます。まず、練習のことについてお尋ねします。練習は、
  ほとんどレコーディングや演奏会のためのものだと思いますが、ご自分の全くの楽しみとしてピアノを
  弾く時間は取れるんですか?
M-時間はあまり多くありませんが、必ずそういう時間を作ってリフレッシュするよう心がけています。
  バッハの「平均律」とか、演奏会で弾くつもりのない曲が多いです。もちろんショパンなんかもよく
  弾きますけど。あと室内楽のピアノ・パートとか…。
--そういえば、先日のチェロとのデュオは本当に絶妙だと思いました。室内楽への関心は、以前から
  お持ちだったんですね?
M-そうです。室内楽は以前から大好きです。
--なるほど。ところで、先日チョイスしていただいた「愛聴盤」についてお聞きします。一瞬意外だなと
  思うものもありましたが、よくよく考えると、凄く頷ける感じがします。「なぜ好きか」を言葉で説明
  するのは難しいと思いますが、どこに惹かれるのか簡単でいいので教えて下さいますか?まず、クナの名前が出たんで
  びっくりしたんですが…。
M-クナッパーツブッシュについては昔から大ファンだったわけではないんです。もちろん名前は知ってましたけど。で、日本で
  CDがたくさん出ているので試しに聴いてみたらやたら面白くて。とにかく、ユニークな語り口ですよね。想像できないような
  音楽の大きさが素晴らしいと思います。あまりにも常識外れに思えて笑ってしまうこともありますが、なんか真剣に冗談を
  やってる感じで、最後には納得してしまいます。
--私も、全くそのとおりだと思います。他のラインナップも相当個性的なアーチストが並んでいます。しかも皆、昔のアーチスト
  ですね。その辺の昔の演奏スタイルが、ご自身の演奏にも反映しているとお考えですか?
M-独自の世界を持つ演奏家ではありたいと思っていますが、とてもとてもこういう巨匠たちに迫ろうなんて恐れ多くて…。
  ピアニストとしては、やはりリヒテルは別格ですね。リヒテルの演奏は、ここ数十年流行っているスマートな耳に心地よい演奏
  とは大分違って、もっとゴツゴツしたものがありますよね。そういう意味では、私自身リヒテルのように弾きたいという願いを強く
  持っています。演奏スタイルが古いとか新しいとかに関しては、あまり意味がないんじゃないでしょうか。音楽的かどうかが
  最重要  だと思います。コルトーにしたって、とてもポエティックで素敵です。
--これまた同感です!そもそも演奏家の中には音楽が好きなのか疑わしい人もいたりしますものね。そういえば、ブタペストQも、
  いわゆる今風ではないですよね。でも深みのあるアンサンブルが素敵だと私も思いますし…。
M-おっしゃるとおりです。あと、私はベートーヴェンの弦楽四重奏曲が大好きで、無人島に持って行く音楽を選ぶのであれば、
  間違いなくベートーヴェンのカルテットです。シュナーベルの言葉だったと思いますが、「ベートーヴェンを知ろうとするなら、
  弦楽四重奏を聴くだけでなく、書けるくらいでないとだめだ」というのがあるんですね。それで私もやってみたことがあります。
--えっ!スコアを書き取ってみたんですか?!
M-ええ。でも、すぐ挫折しました(笑)。写すだけでもものすごいエネルギーが要りますから、作曲するエネルギーたるや想像を
  絶するものです。ベートーヴェンの偉大さを肌で感じることができだだけでも面白い体験でした。
--シューベルトのソナタのリヒテル盤ですが、さっきも出ましたが、リヒテルが別格というのは分かる気がします。
  でも、どうなんでしょう、いわゆるシューベルトらしさというのからかけ離れすぎて、リヒテルの存在が大きすぎると言う人も
  いますよね。さっきのクナなんかもそうですが、決して模範的な演奏様式ではないわけですが、メジューエワさんの演奏を
  聴くと、個性的であると同時に、様式も厳格に保っている感じがするんですが…。
M-ここにあげた人たちの演奏には様式の概念云々を超えた力がありますよね。彼らの魅力的なパーソナリティを私は尊敬
  しています。真似なんてとても不可能ですよね。ただ私自身は、作品の様式については尊重しなければならないといつも
  思っています。そのプロセスを経ないでは、自分の理想とする感動的な演奏にはならないと思っているんです。作品の様式を
  踏まえながら個性的な演奏ができれば一番ですよね。そういう意味では、やるべき勉強があまりにたくさんあって、それこそ
  一生勉強を続けないといけません。
--なるほど。そういうメジューエワさんの信念は演奏からもなんとなく感じていたんで、直接お話が聞けて良かったです。

--最後に今後の予定を聞かせてください。
M-まず2月に、メトネルの『夜の風』のCDが出ます。その他、録音済みのところでは、メンデルスゾーンの作品集が1枚と、
  ショパンのアルバムが1枚、あとシューマンの『交響的練習曲』とベートーヴェンの第31番のソナタのカップリングの
  アルバムを出す予定です。
--将来的な夢は?
M-ベートーヴェンとシューベルトのソナタを極めることです。今は特にドイツの古典派と初期ロマン派を集中的に取り組んで
  いますが、ショパンやロシアものも当然弾いていきますので、そのあたりのバランスをうまく取りたいと思っています。
(2004年12月)

メトネル:ピアノ・ソナタ ホ短調 Op.25-2 《夜の風》、6つのおとぎ話 Op.51

メジューエワと「夜の風」
--日本にはメトネルを頻繁に聴いている人はそう多くないと思うので、簡単に聴きどころを教えていただけますか?
M-《夜の風》は、メトネル作品の中でも最大の難曲で、弾くのはまさに格闘です。ソナタですからもちろんソナタ形式に沿っては
 いるのですが、非常に複  雑に書かれていて、うまくまとめるのが大変です。全体で36分もかかる大曲です。メトネル作品
 一般について言うと、彼の作品ではテーマ素材はかなり シンプルなのですが、展開の仕方が独特です。ひとつの素材を
 徹底的に展開させる、そういう面は、古典的というかドイツ的ですね。ベートーヴェンに  近いかもしれません。シンプルな
 素材を使って巨大な建築を作り上げるといった趣です。一見とっつきにくいかもしれませんが、その独特の世界にはまると
 抜け出せなくなる魅力があります。
--その魅力に気付かれたのは、やっぱりトロップ先生の影響ですか?
M-それもありますが、自分自身ずっと好きでした。もうライフワークです。
--「夜の風」は演奏会で取り上げたことは?
M-3年前、メトネルの没後50年の年に一回弾いただけです。
--メトネルには『おとぎ話』というタイトルの曲も、いくつかありますね?
M-これはメトネルが創始したジャンルで、フィールドにとっての「ノクターン」やシューマンの「ノヴェレッテ」にあたるようなもの
 です。自由なイマジネーショ ンで書かれた小品で、ストーリー性のあるおとぎ話の意味合いとはちょっと違います。
 そう言えば最近は、ピアノを学んでいる日本の学生さんの間でも 、メトネルがちょっとしたブームになっているそうで、
 嬉しい限りです。
--その火付け役は、メジューエワさんですものね。考えたら、ラフマニノフのソナタや、スクリャービンの曲が頻繁に
 聴かれたり、弾かれたりするようになったのは、わりと最近ではないでしょうか?メトネルも、一部のマニア向けの作曲家
 ではなく、広く聴かれるようになる日は近いんじゃないでしょうか。
M-そうなるといいですね。
(2004年12月)



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