|
|
おしゃべり音楽会 |
柴田南雄:著 |
青土社 |
税抜\1800 |
|
“名曲鑑賞ガイドのはずが、意外な結果に!?” |
|
作曲家の柴田南雄氏と、当時NHKの洋楽担当だった前和男氏との対談形式で、1966年から1973年までのN響の演奏会で取り上げられた曲の解説を行なった本。といっても、これが単なる名曲ガイドではないのです。超有名曲から、ピツェッティの“「エディプス王」への交響前奏曲”といったかなりマイナーな曲まで、全50曲が取り上げられており、例えばベートーヴェンの「エグモント」序曲のような十分知っているつもりの曲でも、最初の弦のモチーフが、スペインのサラバンドのリズムだとか、私にとって初めて知るようなことが随所に登場するので、実に興味深く読み通すことができました。柴田氏自身がリアルタイムで経験した出来事も織り交ぜつつ話が進められるので、一層興味深いものがあります。また、更にこの本を面白くしているもう一つの要因が、このふたりの掛け合い!柴田氏はご存知のとおり、作曲活動にととまらず、独自の見識に基づく著作を多く残しているので、曲目解説はお手のものだというのは当然だとしても、イギリス音楽にあまり価値を見出さなかったり、レスピーギの「ローマ三部作」を通俗名曲と言い切ってしまうなど、柴田氏ならではのチクリとくる本音も垣間見せているところが面白く、その柴田氏に対する前氏の質問の投げかけ方がこれまた最高!作曲家について、作品について、時代背景まで含めてなり詳細な知識を持ち合わせている人だということは、最初の数ページを読んだだけで明らかですが、一貫してどの曲も最初の切り出しは、「私はこの曲について全く知らないのですが…」と大いに謙遜しておきながら、途中から、十分聴き込んでいなければ話せるはずのない曲に対するイメージや、他の作品との比較などの見識を柴田氏と同じ土俵で披露し合うという流れが妙に笑えてしまうのです。時代を感じるというか、NHK的というか…。当初は、N響の演奏を聴く人の予備知識としての解説が目的だったとは思いますが、これはその目的以外の面白みを見出せる珍ガイドです。 |
このホームページ内の各アイテムの紹介コメントは、営利・非営利の目的の有無に関わらず、
複写・複製・転載・改変・引用等、一切の二次使用を固く禁じます。
万一、ここに掲載している文章と極めて類似するものをお見かけになりましたら、メールでお知らせ頂ければ幸いです。 |
|