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コレクターの快楽 |
竹内貴久雄:著 |
洋泉社 |
税込み\1,800 |
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“ありきたりの名盤ガイドに一石を投じる竹内氏の入魂作!” |
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序文の中で明らかにしているように、これは、特定の音楽家のCDばかりが繰り返し発売されなかで、そんな状況に飽き足らない音楽ファンのために書かれた独特のガイド本です。「様々な演奏に対する情報の宝庫」と自分で書いていしまうのには一瞬驚いてしまいますが、中身は確かにありきたりの名盤ガイドとはかなり趣が異なります。竹内氏が今までに聴いたディスクについて、独自の観点から紹介する意義があると思われるものを抽出し、CD、LP、廃盤を問わず紹介していくスタイルが取られていて、新鮮な発見が随所にあります。特に目を引くのは、アルチェオ・ガリエラやトーマス・シッパーズ、タマーシュ・ヴァーシャリといった忘れられかけているアーチストについてその魅力を伝え、代表盤について解説を加えている点。他ではまずお目にかかれないので、それだけでも貴重です。しかもガリエラ、シーパーズ、フィルクスニー、ラトルに関しては、竹内氏独自の調査によるディスコグラフィーを巻末に付けるという入念さ!伴奏指揮者ととしてしか一般には認識されていないガリエラは、以前聴いたロッシーニの序曲、シッパーズは「展覧会の絵」の痛快な演奏が個人的に強い印象が残っているだけに嬉しさもひとしおでしたが、これなどは「他にも良い演奏はいくらでもある!」という熱い思いの最も顕著な現われと言えるでしょう。第1章の“コレクターの基礎知識”では、それぞれの名盤が生まれた時代背景を解き明かすと共に、録音がまさに芸術作品となるまでの過程を簡潔に解説。第3章“掟破りの名盤チョイス”も有名無名の名演盤をバランスよく紹介。最後の“とっておきの愛蔵盤ファイル”は、ほとんどがLP(一部CD化済)ですが、一風変わったヒストリカル・コレクションとして非常に興味深いものがあります。実のところ、私は洋泉社のクラシック系の書籍の独特のノリがどうも苦手なのですが、これも序文に書かれているように、「評論と紹介の混同現象の打破」をその洋泉社の本の中で試みているというのも、何とも意味深です。 |
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